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秋田地方裁判所 平成元年(行ウ)3号 判決

原告

東日本旅客鉄道株式会社

右代表者代表取締役

住田正二

右訴訟代理人支配人

山岡瑞雄

右訴訟代理人弁護士

内藤徹

被告

秋田県地方労働委員会

右代表者会長

伊勢正克

右指定代理人

田代正吉

外三名

被告補助参加人

国鉄労働組合秋田地方本部

右代表者執行委員長

三浦敬

右訴訟代理人弁護士

深井昭二

金野繁

金野和子

横道二三男

山内滿

沼田敏明

虻川高範

小林昶

荘司昊

高橋敏朗

伊藤治兵衛

川田繁幸

主文

一  被告が、秋地労委昭和六二年(不)第二号―一事件について、平成元年九月二六日付けをもってした救済命令のうち、別紙(1)の団体交渉申入れ事項について団体交渉を命じた部分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、補助参加によって生じたものを除きこれを二分し、その一を原告の、その余を被告の負担とし、補助参加によって生じたものはこれを二分し、その一を原告の、その余を補助参加人の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一原告

被告が、秋地労委昭和六二年(不)第二号―一事件について、平成元年九月二六日付けをもってした救済命令を取り消す。

二被告

1  (本案前の答弁)

本件訴えを却下する。

2  (本案の答弁)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二事案の概要

一争いのない事実

1  原告は、昭和六二年四月一日、日本国有鉄道改革法等に基づき、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営していた旅客鉄道事業のうち、東北及び関東地方における事業を引き継いで設立された株式会社であり、肩書住所地に本店(以下「原告本社」又は単に「本社」という。)を置き、秋田支店(平成二年七月ころ「秋田支社」と改編。以下「原告秋田支店」又は単に「秋田支店」のようにいう。)を設けている。

2  補助参加人は、原告秋田支店に勤務する労働者等で組織された労働組合であり、その上部に国鉄労働組合東日本本部(もと同組合東日本鉄道本部。以下「国労東日本本部」又は単に「本部」という。)があり、更にその上部に国鉄労働組合(以下「国労」という。)がある。

3  原告と国労東日本本部は、昭和六二年四月二三日、労働協約(有効期間同年九月三〇日まで。以下「六二年協約」という。)を締結し、右労働協約では、団体交渉は、本社及び地方(秋田支店等)において、出向の基準に関する事項等について行うこと、組合員が、労働協約及び就業規則等の適用及び解釈について苦情を有する場合は、その解決を苦情処理会議に請求することができ、原告並びに苦情申告者及びその所属する組合は、苦情処理手続によって最終的に決定された事項を、責任をもって実施しなければならないこと、組合員が、本人の出向等についての事前通知内容について苦情を有する場合は、その解決を簡易苦情処理会議に請求することができ、苦情申告者及び原告は、右会議の判定及び決定については、最終のものとし、これに従わなくてはならないことが、それぞれ定められた(以下、右両者を一括して「苦情処理制度」という。)。

4  原告秋田支店と補助参加人は、同年五月六日、労働協約の適用に関する覚書(以下「六二年覚書」という。)を締結し、右覚書の前文には、右両者は秋田支店固有の事柄について協議等を行うこととする旨の記載がある。

5  補助参加人は、原告秋田支店に対し、同年五月一四日、別紙(1)申入書の事項(以下「本件団体交渉事項七号」という。)につき、また、同年六月三〇日、別紙(2)申入書の事項(以下「本件団体交渉事項八号」といい、右両者を一括して「本件団体交渉事項」という。)につき、それぞれ団体交渉を求めたところ、同支店はいずれも応じなかった。

6  補助参加人は、同年七月二日、被告に対し、原告を被申立人として、右団体交渉の拒否につき不当労働行為救済の申立てをしたところ(秋地労委同年(不)第二号―一)、被告は、平成元年九月二六日付けで、左記の命令(以下「本件命令」という。)を発した。

(一) 被申立人は、申立人と本件団体交渉事項について、すみやかに団体交渉を行わなければならない。

(二) 申立人のその余の申立ては棄却する。

7  補助参加人は、原告秋田支店と、平成二年二月一七日、別紙(3)申入書の事項(以下「新団体交渉事項八号」という。)につき、また、同年八月七日及び九月五日、別紙(4)申入書の事項(以下「新団体交渉事項一九号」といい、右両者を一括して「新団体交渉事項」という。)につき、それぞれ団体交渉を行った(以下「新団体交渉」という。)。

二本案前の主張

1  被告

(一) 原告と補助参加人との間で前記のとおり新団体交渉が行われているところ、本件団体交渉事項と新団体交渉事項とは、全く同一であるとはいえないが、その間二年半ないし三年間が経過し、出向が実施されてきたことからすれば、後者は前者を整理し直したものと解することができ、具体的にみても、(1)本人の同意についての本件団体交渉事項七号の2(2)及び八号の2と新団体交渉事項一九号の基本3及び5、(2)出向終了後の取扱いについての本件団体交渉事項七号の2(5)及び八号の17と新団体交渉事項八号の基本10及び一九号の基本4、(3)事前に明示された就労条件と出向先の就労条件に差異が生じた場合の取扱いについての本件団体交渉事項七号の2(6)及び(8)並びに八号の4と新団体交渉事項八号の基本12、(4)賃金についての本件団体交渉事項七号の2(7)と新団体交渉事項八号の基本4、(5)出向継続ができない場合の取扱いについての本件団体交渉事項七号の2(9)及び八号の19と新団体交渉事項八号の基本7及び一九号の基本6、(6)健康診断についての本件団体交渉事項八号の8と新団体交渉事項八号の基本5、(7)業務災害についての本件団体交渉事項八号の9と新団体交渉事項八号の基本6、(8)組合間差別についての本件団体交渉事項八号の21と新団体交渉事項一九号の基本2、(9)人選基準についての本件団体交渉事項七号の1(1)及び八号の1と新団体交渉事項八号の基本3、(10)出向範囲についての本件団体交渉事項七号の2(3)及び八号の18と新団体交渉事項一九号の基本11、(11)出向先の労働条件の明示についての本件団体交渉事項七号の2(8)並びに八号の6、10、11及び13ないし16と新団体交渉事項八号の基本1及び8並びに一九号の基本7及び8、(12)出向者の苦情についての本件団体交渉事項七号の2(10)と新団体交渉事項八号の基本13、(13)鉄道事業と出向の関連性についての本件団体交渉事項八号の3と新団体交渉事項一九号の基本4、(14)勤務査定についての本件団体交渉事項八号の7と新団体交渉事項八号の基本2のように、その大半は、文言が同一又は文言は異なっても事柄の性質が同一であり、本件団体交渉事項には、新団体交渉事項には文言としてはないやや抽象的な事項もあるが、その背景を探ると実質的には後者に包含されているといえる。

従って、本件命令は、実質的には既に履行されており、救済命令が拘束力を失う前にそれに従って履行し、それを回復するために救済命令の取消をすることが必要であるような特段の事情がない限り、救済命令の取消を求める法律上の利益はないところ、本件においてはこのような特段の事情は認められない。

(二) 救済命令が履行されたか否かを判断するのは、第一次的には当該命令を発した労働委員会である。原告が本件命令に従う意思がなかったとの点は、原告の主張以外に明らかにするものはない。また、補助参加人が、履行があった旨原告に通知しなかったとか、緊急命令の取下げが遅れたとかの点は、右認定の妨げとはならない(なお、緊急命令の取下げは、本件の口頭弁論期日に合わせたに過ぎない。)。

(三) 本件命令は、包括的に補助参加人組合員に対する一切の出向について適用されるという趣旨ではなく、本件団体交渉事項についての団体交渉を命じたのみであることは一見して明らかであり、新団体交渉により実質的に既に履行されている以上、もはや原告に対し、過料等によりその履行を強制することは考え難く、原告の公法上の義務は法的には無意味というべきである。また、本件命令の存在が原告にとって不名誉であっても、その不利益は事実上のものに過ぎない。

(四) よって、原告には、本件命令の取消を求める利益はなく、本件請求は不適法である。

2  補助参加人

新団体交渉は、原告が、本件命令に従ってこれを履行したものであるから、その時点で右命令の取消を求める法律上の利益を失ったというべきである。

3  被告及び補助参加人の本案前の主張に対する原告の反論

(一) 新団体交渉は、秋田支店固有の事柄についてのものであり、(1)新団体交渉事項八号の基本2の出向先における勤務査定書はボーナスに関するもの(横手精工に出向した国労組合員のボーナスの支給率が、他の組合員と比較して低いとするもの。)、本件団体交渉事項八号の7は、表彰懲戒の一般的説明を求めるもの、(2)新団体交渉事項八号の基本5は出向先の東北交通機械でサンダー作業に従事している社員のアスベスト、鉛、塵肺等に対する特殊健康診断を含め特段の配慮を求めたもの、本件団体交渉事項八号の8は出向者の健康診断に関する一般的な質問、(3)新団体交渉事項八号の基本6は、横手精工において出向者が事故防止懇談会に加えられていることから他の出向先においても同様の方向付けを求めるもの、本件団体交渉事項八号の9は、業務災害補償についての一般的説明を求めるもの、(4)新団体交渉事項八号の13は出向についての秋田支店の相談、フォローを具体的な状況をふまえて一層活発に行ってもらいたいとのもの、本件団体交渉事項七号の2(10)は一般的なものであるなど、似たようにみえても、一般的、抽象的な本件団体交渉事項とは異なっており、なかんずく出向は本人の同意を前提とする、あるいは公募によるというような制度の根幹に関する事項はほとんど含まれていない。

また、(5)新団体交渉事項八号の基本10と本件団体交渉事項八号の17(出向後の復帰についてのもの)、(6)新団体交渉事項八号の基本12と本件団体交渉事項七号の2(8)及び八号の4(就労条件について事前の説明と差異が生じた場合の取扱い)、(7)新団体交渉事項八号の基本7及び一九号の基本6と本件団体交渉事項七号の2(9)及び八号の19、(8)新団体交渉事項一九号の基本5と本件団体交渉事項七号の2(2)(出向に際し本人の同意を前提とすることを求めるもの)は、共通するともいえるが、従前秋田支店が補助参加人に対し説明し、あるいは原告本社が国労東日本本部と団体交渉の場で協議したことを便宜新団体交渉の場で繰り返したに過ぎず、殊更これらを除外しなければ団体交渉に応じないという頑な姿勢をとらなかったまでである。

(二) 原告は、再び本件団体交渉事項と同一の内容の団体交渉の要求があれば、これを拒否する意思にかわりはなく、仮に補助参加人において、これにつき改めて団体交渉を求める意思がないとしても、労働委員会の救済命令の履行義務は公法上の義務であり、対応する組合が消滅したような場合でない限り、組合の意思如何に関わらず履行を命ぜられる状況にかわりはない。まして、本件命令は、包括的に原告が補助参加人組合員に対する一切の出向に適用される趣旨であることが明らかであるから、これが存在する限り、原告が実施する出向に際し、団体交渉応諾の義務を負うことになる。

(三) 補助参加人は、新団体交渉が行われた際には、これによって本件命令に従った団体交渉が行われた旨の認識を原告らに対し示したことはなく、右主張は、平成三年一月二五日付けの補助参加人の本訴準備書面によって初めてなされ、緊急命令の申立ての取下げがなされたのは、同年一〇月である。これらからして、補助参加人自身、本件命令が履行されたという認識がなかったというべきである。

(四) 従って、原告には、なお、本件命令の取消を求める利益があるというべきである。

三本案の主張

1  原告

(一) 原告秋田支店は、以下のとおり、本件団体交渉事項について団体交渉に応じる義務はない。

(1) 支店において団体交渉の権限のない事項

原告秋田支店と補助参加人が団体交渉できるのは、秋田支店固有の事柄に限られるというべきであり、このことは、六二年協約の締結に際しての団体交渉において、原告が地方で行う団体交渉は地方固有の権限内の交渉となる旨回答し、国労東日本本部もこれに特段の異議を述べなかったこと、右協約の施行細則ともいうべき、原告秋田支店と補助参加人間の六二年覚書において、団体交渉の権限につき秋田支店固有の事柄と明記していることに照らし、明らかである。

しかるに、本件団体交渉事項には、出向を命ずる選定基準、出向は公募を原則とすること、本人の意思を尊重し強制、強要にわたらないこと、出向に関する協約を締結されたいといった出向制度の根幹に関わるものや就業規則二八条、出向規程五条等の解釈を求めるものがあるが、これらは原告の全社的な事項であって、秋田支店固有の事柄に該当せず、秋田支店限りでの判断はできないから、秋田支店には団体交渉の権限がない。また、補助参加人も国労東日本本部の下部組織としてその統制に服し、全社的な事項について独立して組合活動をなしうるものとはいえない。従って、このような秋田支店の権限に属さない事項について、原告秋田支店が団体交渉に応じる義務はない。

こうした全社的な事項は、原告本社と国労東日本本部との団体交渉において協議すべきであって、現に、昭和六二年五月二二日から七月二四日まで八回にわたり、ほぼ同一の事項について、右本社・本部間の団体交渉がなされ、合意には至らなかったものの、議論は尽くされており、原告は、右交渉と重複して支店における団体交渉に応じる義務を負うものでもない。本件命令は、仮に支店に権限がないとしても、権限を有する者を出席させ、あるいはこの者と諮りながら団体交渉すれば足りるともいうが、このような煩瑣な手続をとる必要性は何ら存しない。

なお、抽象的な就業規則、出向規程の解釈は、本社において統一的な解釈を説明すべきものであるが、秋田支店においても補助参加人に対し申入れを受けた際説明しており、その大半は、本社が本部に対して説明しているものである。

(2) 労働条件等の説明に関する事項

本件団体交渉事項七号の1(7)、2(7)及び(8)並びに八号の5ないし9及び12ないし16等は、単に労働条件等の説明を求めるものに過ぎず、それ以上の問題提起を含んでいないものである上、個々の出向者に対しては、出向のしおりを配付したり、説明会を開いたりして既に説明済みであって、団体交渉にはなじまない。

なお、本件団体交渉事項の団体交渉申入れに際し、補助参加人に対し、団体交渉にはなじまないが、不明な点として求めがあれば説明の場を設けてもよい旨告げたところ、補助参加人から、「出向につき疑問点解消の場を設けてほしい。日程については後日連絡する。」旨の申入れがあったにもかかわらず、その後連絡がなかったものである。

(3) 出向者の具体的な苦情処理に関する事項

本件団体交渉事項七号の2(8)及び(10)並びに八号の4は、具体的な問題を含んでいないが、仮に個々の社員の苦情の解決を求める趣旨だとすれば、六二年協約により、出向に関する労働条件上の苦情については、出向前は簡易苦情処理会議、出向後は苦情処理会議において取り扱い、労使双方ともその結論を尊重する旨定められている。労働協約上団体交渉と別の処理手続が定められている以上、労使ともにこれに従うのが当然であって、その有効期間中にこの手続によらず団体交渉を求めることは許されず、これを拒否しても不当労働行為には該当しない。

本件団体交渉事項は、個々の苦情ではなく、労働協約上の苦情処理制度の変更を求める趣旨とも解されるが、そうだとすれば出向に関する労働協約の締結を求めるものに含まれ、右(1)のとおり団体交渉の義務はない。

本件団体交渉事項は、右(1)を主として、付随的に(2)及び(3)があるが、いずれも以上のとおり原告は団体交渉の義務を負うものではなく、原告に団体交渉を命じた本件命令は取り消されるべきである。

(二) 本件命令は、一方で出向の発令が今後もなされる状況下においては、なお団体交渉の緊急の必要性は失われないとしながら、他方で本件団体交渉事項には一般的抽象的な部分や当事者間の団体交渉を通じて整理調整されるべき部分もあるとするなど、矛盾した説示をしているが、当該出向者が全員復帰しているにもかかわらず、なお、今後のすべての出向について本件団体交渉事項に関する団体交渉を行うべき特段の事情はなく、救済の利益は消滅しているとして棄却すべきであった。

国労は、国鉄のいわゆる分割・民営化に反対し、出向についても本人の同意を前提としあるいは公募を原則とすべきであるとしてこれに反対してきた。しかし、本件団体交渉事項についての団体交渉の申入れから五年以上経ち、出向についての理解も進み常態化しており、国労も地域間異動に準ずる出向や五五歳以上の労働者の原則出向についての団体交渉において、本人の同意や公募に固執することなく、労働協約の締結に応じる(これらの団体交渉は、原告本社と国労東日本本部間のみで行われている。)など、現実的な姿勢にかわっている。このような情勢の変化にもかかわらず、本件命令は、具体的な出向の問題を離れ、抽象的、無限定に将来行われる一切の出向について、本件団体交渉事項についての団体交渉の緊急の必要があるとするものであり、この点からも救済の利益はなかったものというべきである。

2  被告

(一) 団体交渉の義務

原告は、本件団体交渉事項を三分し、制度の根幹に関わる事項が主でその余は付随的である旨主張しているが、このような分類は一方的かつ形式的である。本件の真の問題は、かように本件団体交渉事項を分類して、二重交渉、個人に説明済みの事項の交渉、苦情処理制度の規定に反する交渉等の必要性があるかということではなく、労働条件の変更を伴う出向に関し、国労東日本本部以外の労働組合とは出向の取扱いに関する協定が締結されているにもかかわらず、国労組合員に対しては、原告本社における同本部との交渉が行き詰まった状態のまま出向が実施され、ニホンケイセキ株式会社に対する出向という具体的な問題も生じており、被告におけるあっせんも打切りになったというような状況下で、団体交渉を拒否する正当な理由があったか否かである。

(1) 支店における団体交渉の権限

ア 六二年協約は、団体交渉の設置単位として本社のほかに支店を明記しながら、団体交渉事項については、本社、支店の区別なく一括して規定しているのであるから、右協約上、団体交渉事項について、本社と支店に差異はないものと解するのが相当である。原告の主張のうち、団体交渉における原告の回答は国労東日本本部がこれを承認したとまでは認められないし、六二年覚書も前文で秋田支店固有の事柄という文言を使っているものの、本文においては六二年協約の団体交渉事項の定めについて何ら制限していない。

補助参加人は、国労東日本本部の下部組織であり、上部団体の統制に服するものの、一個の独立した労働組合であって、独立して活動をなしうる。そして、補助参加人が本件団体交渉事項について交渉を求めるに際し、同本部が、統制に反して交渉を行おうとしたとして異議を述べたなどの事情は認められず、かえって、同本部は、原告本社との交渉において、出向先の労働条件や業務内容が明確にされておらず、地方で交渉したい旨述べていること、右本社における交渉でニホンケイセキ株式会社に対する出向という地方の具体的問題も取り上げられていることに鑑みると、同本部と補助参加人の間に明確な交渉権限の配分はなされておらず、相互に留保されているものとみるのが相当である。補助参加人の交渉権を制限しうるとしても、その旨が協約に明示されていることを要するところ、六二年協約にはそのような規定はないことは前記のとおりである。

イ 仮に秋田支店における団体交渉は同支店固有の事柄に限られるとしても、何がこれに該当するかは曖昧であり、原告がこれを判断するとすれば、恣意的な運用によって様々な交渉を拒否することが可能になる。右内容を形式的に解すれば、労働協約や就業規則は、本来全社に適用されるものであるから、これに関する事項は支店では交渉できないということにもなりかねないが、団体交渉においては、労働条件、即ち労働協約や就業規則の解釈、運用に関する事項が重要なのであって、これが除外されるとすれば、支店における交渉の範囲は著しく狭められることになる。従って、六二年覚書の同支店固有の事柄と言う文言は補助参加人の交渉権を制限するものではなく、せいぜい支店と全く関係のない事項を除くという確認的な意味を持つに過ぎないというべきである。

本件においても、原告は右固有の事柄の意義について何ら明らかにすることなく、せいぜい支店固有の具体的な問題というにとどまるが、具体的な問題のみが支店固有の事柄に該当するというのであれば、あまりにも限定的かつ一方的な解釈であって、補助参加人の交渉権を不当に制限するものといわなければならない。

ウ 更に、支店に権限がないという趣旨も明確でない。原告は、労働協約の締結権限までなければ交渉権限もない旨主張しているようにも解されるが、前者がないとしても直ちに後者もないということを意味するものではない。交渉受理の権限もないという趣旨だとしても、その範囲を明らかにしない限り、団体交渉事項として受理できるものだけが団体交渉事項であるという循環論法に陥ることになる。

エ 確かに本件団体交渉事項には、一般的、抽象的な部分が多いが、後記3のとおり、秋田支店の運用でなしうるものであり、支店限りで処理できるものであるから、支店固有の事柄に該当するというべきである。

オ 本件団体交渉事項には、原告本社と国労東日本本部における団体交渉の事項と重複するものがあるところ、一般に、交渉の重複や二重交渉のおそれがある場合に、使用者は、それを避けるため上部団体と下部団体との調整がつくまで、一時的に交渉を拒否できるものというべきであるが、本件において、原告の拒否が一時的なものだったとは認められない。

また、本件団体交渉事項は、右本社における交渉と同一の事項が、秋田支店においてどのように具体化、運用されるかを確認する趣旨と考えられるから、そもそも二重交渉には当たらないといえるし、本件は、前記のような緊急の状況においてなされたものであって、いまだ出向についての実績もなかったから、文言が一般的、抽象的であったとしても緊急やむを得ないものとして容認されるべきであり、原告が文言のみに拘泥して交渉を拒否しながら、一方で出向を実施していくというのは、具体的問題が発生するまで交渉を許さないことになり、補助参加人の交渉権を著しく制約することになる。

カ 仮に、本件団体交渉事項について秋田支店に交渉の権限がないとしても、直ちに交渉を拒否できるものではなく、支店は、権限のある者を交渉に出席させ、あるいは交渉に応じた上権限者と諮りつつ適宜の措置をとることが求められるのであり、原告が一方的に、交渉しても無駄だというような結論の先取りをすべきものではない。

(2) 個人に対する説明に関するもの

本件団体交渉事項には、解明を求める事項とか、「明らかにされたい。」といった記載があるが、補助参加人は、組合や出向者個人に対する説明が不十分であることや、原告の説明と実際の労働条件が相違することを問題とし、団体交渉の前提ないし不離一体のものとしての説明を求めているのであって、単に一方的な説明を得たいという趣旨と解釈すべきものではない。

右説明が不十分な場合や実際の労働条件に疑義がある場合は、個々の問題を吸い上げ、集約的に団体交渉を行うことは、労働組合本来の機能であり、団体交渉に代わる説明の場を設けたとしても、労使対等の団体交渉に代替しうるものではない。

(3) 苦情処理制度に関するもの

六二年協約は、出向の基準に関する事項を団体交渉事項と定めるとともに、組合員が、出向に関する事前通知内容について苦情を有する場合は簡易苦情処理会議に、労働協約及び就業規則等の適用及び解釈について苦情を有する場合は苦情処理会議にそれぞれその解決を請求できることを定めているが、右簡易苦情処理会議や苦情処理会議は労働者の個別の苦情を簡易迅速に解決することを目的としたものであるのに対し、団体交渉は、労働組合の団結権に由来し、労働組合の主要な活動の一つとして幅広く認められるものであって、個別の苦情について簡易迅速な解決の方法があることは、団体交渉と排他的な関係にあるものではない。

原告主張のとおり苦情処理制度で処理しうる事項については団体交渉ができないとすれば、団体交渉事項の制約にほかならず、協約上交渉事項の規定等においてその旨定められているはずであるが、そのような定めはない。

なお、苦情処理制度を経た場合でも、右制度に最終的な解決に至る手段が定められていない場合は、たとえ右各会議による解決を最終のものとする旨の協約の規定があったとしても、最終的には団体交渉を拒否できないものというべきである。第三者ないし中立的立場に立つ委員が右各会議の構成員とされていない以上、請求が却下された場合、苦情は解決されないまま放置される結果となるが、個々の組合員の労働条件の改善を目的とする労働組合にとって、かかる結果を座視することはその存在の否定につながるからである。

更に、苦情処理制度は労使の協力的要因の存在を前提とするところ、労働組合が右制度によって処理すべき事項について団体交渉を要求している場合は、もはや右前提が崩れているのであるから、使用者は、団体交渉を拒否できないというべきである。

(二) 救済の利益

本件命令の時点において、原告秋田支店は一切補助参加人の交渉要求に応じておらず、出向の発令がその後もなされる状況にあったから、団体交渉の緊急の必要は失われていなかったというべきであり、団体交渉を命ずる利益は労働組合に関わるものであるから、個々の発令対象者が出向を終え原職に復帰したことも、その利益を失わせるものではない。

原告は、現時点において補助参加人を救済すべき必要はない旨主張するが、救済命令の取消訴訟において、当該命令の違法性判断の基準時は右命令時点であって、その後の事情の変更により争う利益がなくなったというのであれば、本訴請求の利益がなくなったということに帰する。

(三) 救済方法

労働委員会は、不当労働行為から生じた状態を迅速かつ直接に是正すべき機関として、個々の事案に応じた適切な是正措置を選択し、これを命ずる権限を有するから、自ら広汎な裁量権を有し、取消訴訟において、救済命令の内容の適否が争われた場合も、裁判所は、労働委員会の右裁量を尊重し、その行使が制度の趣旨、目的に照らし是認される範囲を超え、又は著しく不合理であって濫用にわたると認められない限り、当該命令を違法とすべきではない。

本件団体交渉事項については、支店における交渉事項が一切ないという原告の主張は支持できなくても、その一部でも非交渉事項に該当するものがあれば、その部分は拒否できるという考えもありうるが、本件では、前記のとおり、原告主張の分類を前提にしても拒否の正当な理由があるとはいえず、被告は、原告と補助参加人間に支店における交渉事項か否かに争いがあり、原告が、個々の事項について検討することなく、一方的に全部これに当たらないとして交渉を拒否したことから、本件団体交渉事項すべてについて、交渉事項の整理、調整を含めて当事者の交渉に委ねる趣旨で交渉を命じたものであり、労使関係正常化のためこうした救済命令を出すことも、被告の裁量の範囲内というべきである。

3  補助参加人

(一) 原告は、本件団体交渉事項を三分しているが、このような分類自体恣意的かつ不正確というべきである。本件団体交渉事項の申入れに際し、補助参加人が最も危惧していたのは、出向発令者がいかなる基準で選定されるかが全く不明であり、右発令が十分な業務上の必要なくあるいは組合所属を理由になされているということであって、出向の発令権者は、原告秋田支店長であるから、右の点は同支店としても明らかにすることができたというべきである。そして、団体交渉は、双方が互いに主張し議論するものであり、その結果合意が成立することも物別れに終わることもありうるが、どういう結果になろうとも、ともかく交渉自体を行うことを求めているのが労働組合法七条二号の趣旨である。

出向は労働条件を大幅に変更するものであるから、労働者としては極めて重大な関心を持たざるを得ず、従って労働者の利益を擁護すべき労働組合が、出向発令に労働者の同意を求め、少なくともその主張を掲げて活動することは当然であり、本件団体交渉事項の申入れも、右活動の一環として当然の要求である。この当時、民営化後初の出向発令を前に現場では広く不安と不満が存在したもので、このことは原告本社において団体交渉が行われていてもかわりはない。

しかるに、原告は、ひたすら国労を敵視し、団体交渉制度に対する無理解あるいは無理解を装った無視により一切の交渉に応じなかったものであって、このような団体交渉拒否に正当な理由があるとはいえないことは明らかである。

(二)(1) 支店における団体交渉の権限

ア 憲法二八条が労働者の団体交渉権を保障した趣旨は、相対的に弱い立場にある労働者が団結して交渉を行うことにより、労働者の意思を労使関係に反映させ、労働者の利益を保障することにあるから、団体交渉権者及び団体交渉事項は広く解すべきであって、補助参加人は固有の団体交渉権を有し、出向に関する事項も団体交渉事項に含まれるというべきである。仮に、労働協約において団体交渉権を制限できるとしても、それは協約上明示されていなければならない。

六二年協約は、団体交渉の設置単位として本社のほかに支店を明記しながら、団体交渉事項については、本社、支店の区別なく一括して規定しているのであるから、右協約上、団体交渉事項について、本社と支店に差異はないものと解するのが相当である。原告の主張のうち、団体交渉における原告の回答は国労東日本本部がこれを承認したとまでは認められないし、六二年覚書も前文で秋田支店固有の事柄という文言を使っているものの、本文においては六二年協約の団体交渉事項の定めについて何ら制限しておらず、原告が右固有の事柄の内容を何ら明らかにできないことからしても、右覚書の締結に際し団体交渉事項を限定するような話合いはなかったものというべきである。

イ 仮に、本件団体交渉事項が秋田支店の権限外だったとしても、交渉に応じたからといって必ずしも労使間で何らかの妥結をしなければならないわけではなく、支店は、権限のある者を交渉に出席させ、あるいは交渉に応じた上権限のある者と諮りながら適宜の措置をとるなどのことが求められるのであって、権限がないことを理由に交渉を拒否することはできない。

ウ 仮に、秋田支店の権限外の事項については、同支店において団体交渉できないとしても、補助参加人が本件団体交渉事項において出向について公募を原則とする等の交渉を求めたのは、全社的に公募を原則とするよう求めたわけではなく、秋田支店の運用の中で可能な限り公募を採用することを求めたに過ぎない(出向者の人選等は支店固有の権限として認められていたのであるから、例えば支店に割り当てられた出向の人数枠の中で第一次的に公募を原則とし、それで定員を満たさなかった場合に支店による人選を行うというような運用も可能なはずである。)から、右交渉事項は支店の権限内のものというべきである。

エ 二重交渉については、一般に禁じられるという見解もあるが、ここでいう二重交渉は、労働組合とその下部組織が同一の事項につき異なる要求を掲げてそれぞれ交渉を求めてきたような場合を指すのであって、同一事項について交渉の要求がなされただけでは、使用者にとって危険はなく、かえって下部組織における交渉の方がより現場の実情を反映させ適切な交渉をなしうることも多いことからすれば、下部組織の交渉権は上部組織のそれに吸収されてしまうのではなく、上部団体における交渉が何らかの妥結に至らない限りなお交渉権を有しているものというべきである。

また、そもそも右ウのとおり本件団体交渉事項は、秋田支店限りで処理し得るものであるから、本社において出向についての団体交渉がなされているとしても、なお支店において交渉する余地があり、二重交渉には当たらない。

(2) 苦情処理制度に関する事項

六二年協約に苦情処理会議や簡易苦情処理会議の規定があることは、直ちに組合員の出向に関する苦情が団体交渉事項でなくなることを意味するものではない。

そもそも苦情処理制度は、労働者にとっての個別の苦情を簡易迅速に解決するためのものであって、労働者の団結権に由来する団体交渉と相互に排他的な関係に立つものではない。個別の苦情について団体交渉できないとすれば、それは団体交渉権の制限にほかならず、協約上明記されるべきであるのに、六二年協約にはそのような規定は何ら存しない。

また、苦情処理制度は、労働協約の規範としての性格を確保するとともに労働協約の適用等について苦情を有する組合員に簡易迅速な解決を保障することを目的とするいわば司法手続に相当するが、六二年協約に定める会議は、第三者ないし中立的立場に立つ委員が構成員とされてないから、労使双方に協力的態度が認められない限り、苦情を申告しても、この手続において解決することが不適当ないし所定期間内に処理できないとして却下されてしまうことになり、有効な解決は期待できない。申告が却下されれば、組合員の苦情は解決されないまま放置されることになるから、組合としては、他の方法による解決を求めざるを得ず、その方法は団体交渉しか考えられない以上、かかる場合に団体交渉を求めうることは明らかである。

更に、組合が苦情処理事項について現に団体交渉を求めている以上は、もはや労使間の協力的要因を前提とする苦情処理制度の基準が崩れていることになるから、使用者は交渉を拒否できないというべきである。

四争点

1  本件訴えの利益

原告秋田支社と補助参加人が、新団体交渉事項について団体交渉したことにより、原告の本件命令を取り消す利益が失われたか。

2  本件命令の違法性

原告が、本件団体交渉事項について、秋田支店における団体交渉を拒否したことに正当な理由があるか。

具体的には、本件団体交渉事項は地方交渉事項といえるか、説明を求める部分は団体交渉事項といえるか、苦情処理制度が設けられている場合苦情処理制度の対象となる事項について団体交渉を求められるか、本件団体交渉事項の団体交渉申入れが中央交渉との二重交渉であるとしてこれを拒否できるか、救済利益があったのかなどである。

第三争点に対する判断

一前記争いのない事実のほか、〈書証番号略〉、証人野原多津美、同成田俊二、同藤枝隆博及び同佐藤竹彦の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実を認めることができる。

1  国鉄改革の経緯

(一) 国鉄は、昭和三九年ころから多額の赤字を計上するようになり、様々な再建策が論じられたが、その中で、全国一律の公社という経営体制の見直しとともに、民営鉄道に比し人員が多く経費に占める人件費の割合が高いといういわゆる余剰人員の問題が指摘されていた。

(二) 昭和五八年六月一〇日、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法に基づき、日本国有鉄道再建監理委員会が発足し、同委員会は、昭和六〇年七月二六日、国鉄を分割・民営化し、人員は民営鉄道並みの適正規模(約一八万三〇〇〇人)に二割上乗せした程度を妥当とすること等を骨子とした国鉄改革に関する意見を内閣総理大臣に提出した。

(三) 同月三〇日、右意見を最大限に尊重する旨の閣議決定が行われ、この趣旨に沿って、(1)国は、六つの旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社を設立し、これに国鉄が経営している旅客鉄道事業又は貨物鉄道事業を引き継がせること、(2)右により各会社が右各事業を引き継いだときは、国鉄を日本国有鉄道清算事業団に移行させること等を内容とする日本国有鉄道改革法等の国鉄改革関連法案が国会に提出され、右各法案は、いずれも成立して同年一二月四日までに公布施行された。

(四) 政府は、同月一六日、日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承認等に関する基本計画を決定したが、右計画において、国鉄の東北及び関東における旅客鉄道事業を引き継ぐものとされている会社の職員は八万九五四〇人とされており、これは概ね前記監理委員会の意見と一致するものであった。

2  国鉄における労使関係の推移

(一) 国鉄には、もと、国労のほか、鉄道労働組合(以下「鉄労」という。)、国鉄動力車労働組合(以下「動労」という。)及び全国施設労働組合(以下「全施労」という。)などの労働組合が存した。

(二) 国鉄は、昭和四六年三月二日、国労と雇用の安定等に関する協約を締結し、機械化、近代化、合理化等の実施にあたり、雇用の安定を確保するとともに労働条件の維持改善を図ること、本人の意思に反する免職及び降職は行わないこと、必要な転換教育等を行うことなどを約し、実際上本人の意思に反する異動は困難になっていたが、右1のような経緯から余剰人員の対策の一つとして、退職及び休職制度とともに、派遣の活用を企図し、各組合に対しその旨提案し、国労とも、昭和六〇年四月九日、職員の派遣(職員としての身分を保有したまま関連企業等において総裁の命ずる業務に従事する)の取扱いについて、派遣は関連企業の指導・育成・強化・人材の育成、国鉄の業務に関連する事項の調査・研究等、国鉄の業務の円滑かつ効率的な遂行のために必要がある場合に行うこと、所属長は、本人の職務経歴、適性等を総合的に勘案の上、派遣職員を決定し、決定に際し、派遣先、派遣期間及び派遣先における就労条件を明示し、所定の同意書を提出させるものとすること、職員は、所定の派遣希望調書に記入し提出できるものとすることなどを内容とする職員の派遣の取扱いに関する協定を締結したが、この協定に付属して、同意書や派遣希望調書の提出について、強制、強要を行わないことが了解されていた。

しかし、国労は、退職、休職、派遣に協力しない「三ないし運動」(「やめない」、「休まない」、「出向かない」というもの)を行ったため、国鉄は、同年五月二五日、国労に対し、文書で右運動の中止を申し入れ、更に、同年一〇月二四日、国労に対し、再度文書で右運動の中止を求めるとともに、右運動を中止しない限り右雇用の安定等に関する協約を再締結しない旨を申し入れた。同年一一月二〇日、国労は三ないし運動を中止する旨決定したが、国鉄は、地方に徹底していないとして、同月三〇日、右協約につき国労とは再締結しなかった(鉄労、動労及び全施労とは更新された。)。

(三) 国鉄は、昭和六一年一月一三日、鉄労、動労及び全施労と国鉄改革及び雇用の安定に労使が一致協力して取り組む旨の労使共同宣言を締結したが、右宣言において、余剰人員対策につき、労使は、派遣制度等の積極的推進、従来の特退協定に基づく退職勧奨の積極的推進、新たな希望退職制度の法的措置がなされた後はその円滑な運用による目標の達成に向けての積極的取組み、職員の将来の雇用の場の確保、拡充についての一致協力について具体的に取り組むことが謳われていた。

(四) 国鉄は、同年三月一四日、右三組合と、余剰人員の地域的不均衡の調整を目的とする広域異動(第一陣)の実施に関する了解事項を締結した。

(五) 国鉄は、同年八月二七日、鉄労、動労、全施労及び真国鉄労働組合(雇用安定協約の締結を主張するグループが国労を脱退して結成したもの)によって組織された国鉄改革労働組合協議会と、今後の鉄道事業のあり方についての合意事項(第二次労使共同宣言)を締結したが、右合意事項において、労使は、分割・民営化を基本とする国鉄改革に向かって一致協力すること、組合は、今後争議権が付与された場合も鉄道事業の健全な経営が定着するまで争議権の行使を自粛すること、今後の鉄道事業が健全な発展を遂げるためには、業務遂行に必要な知識と技能に優れ、企業人としての自覚を有し、向上心と意欲にあふれる職員により担われるべきであり、これまでにも派遣・休職制度等、直営売店、広域異動等を推進し、労使共同宣言に則り着実な努力を重ねてきたが、今後は更に必要な教育の一層の推進を図るとともにそれぞれの立場において職員の指導を徹底すること等が謳われていた。

(六) 同年一〇月九日及び一〇日、国労の第五〇回臨時全国大会において、労使共同宣言を締結し雇用確保を図ろうとする緊急執行部方針案が提出されたが、否決され、国鉄の分割・民営化に反対する新執行部が選出された。

この前後から国労の組合員の脱退が相次いでいたが、昭和六二年二月、旧執行部を中心として日本鉄道産業労働組合総連合が結成され、他方、前記協議会を構成していた組合は全日本鉄道労働組合総連合会を結成した。

3  原告における労使関係等

(一) 国鉄は、昭和六一年一二月二四日、前記国鉄改革関連法の成立を受けて、全職員に対し、同法に基づき国鉄の事業等を引き継ぐ承継法人の職員となることを希望するか否かの確認のため、承継法人の職員となることに関する意思の確認についてと題する書面を交付し、その際、資料として各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の職員の労働条件を記載した書面を配付したが、右書面には、就業の場所について、「各会社の営業範囲内の現業機関等において就業することとします。ただし、関連企業等へ出向を命ぜられることがあり、その場合には出向先の就業場所とします。」、従事すべき業務について、旅客鉄道株式会社に関し、「旅客鉄道事業及びその附帯事業並びに自動車運送事業その他会社の行う事業に関する業務とします。なお、出向を命ぜられた場合は、出向先の業務とします。」旨それぞれ記載されていた。

(二) 国鉄を退職しても承継法人への採用を希望しない職員が予想外に多かったことなどから、原告を含め本州における旅客鉄道事業を引き継ぐ旅客鉄道株式会社には希望者は概ね採用されることになり、昭和六二年二月一六日、右改革関連法に基づく承継法人の設立委員は、承継法人で採用される国鉄職員に対し採用通知を出したが、秋田鉄道管理局の管内(秋田県の全域並びに青森県及び山形県の各一部)においても、一人を除き希望者はほぼ全員採用されることになった。

(三) 右改革関連法に基づき、昭和六二年四月一日、国鉄の東北及び関東における旅客鉄道事業を引き継いで原告が設立され、秋田鉄道管理局の事業範囲を引き継いで秋田支店が設置された。設立時点における原告の社員数は八万二四六九名であり、労働組合としては、国労のほか、日本鉄道産業労働組合総連合傘下の東日本鉄道産業労働組合(以下「鉄産労」という。)、全日本鉄道労働組合総連合会傘下の東日本旅客鉄道労働組合(もと東日本旅客鉄道労働組合連合会。以下「東鉄労」という。)等が存在した。

(四) 昭和六二年四月一日、原告本社の人事部長らが、国労東日本本部の書記長、書記次長、執行委員らと会い、民営化に伴い収益をあげられるよう協力を求めるとともに、まず労使間のルールを定める暫定協約を締結した上、総合的な労働協約等の締結をしたい旨提案したところ、同本部側は、原告の組織がよく分からないとして組織機構図の交付を求めるとともに、団体交渉権との関係について原告の権限は画一的、統一的になるのか、地方権限は一切ないのか尋ね、原告側は、権限をはじめきっちりできているので早急に説明したい旨答えた。また、原告側は、団体交渉で本社で決めると地方での交渉はどうなるのかとの質問に対し、国鉄時代の形式とは違い、地方においては地方固有の権限内の交渉となる旨答えた。更に、同本部側が、「我々の組織は九の地方本部があり、暫定協約中の交渉委員を一〇数名にしてほしい。我々としても集中的に交渉したいと思っている。」旨述べたのに対し、原告側は「暫定協約をまず締結し、労働協約を本社・本部間に限定して五名に絞って交渉していきたい。」旨答え、その後は主に委員の数を巡って話合いがなされ、結局、同月二三日、別紙(6)のとおり、六二年協約が締結された。

(五) 原告秋田支店と補助参加人は、右(四)記載の経過をふまえて、同年五月六日、別紙(7)のとおり、六二年覚書を交換した。

4  原告における出向をめぐる労使関係

(一) 原告は、余剰人員と職員の民間企業的意識の欠如が国鉄の経営悪化の要因の一つであり、また、新会社発足時の人員も既に適正人員を二割超えているとの認識を持っていたため、新会社発足に当たり、別企業に社員を出向させることを重要な人事政策と位置付け、これを制度化するため、就業規則に出向についての規定を設けた。

就業規則における出向の定めは、以下のとおりである。

第二八条

① 会社は、業務上の必要がある場合は、社員に転勤、転職、昇職、降職、昇格、出向、待命休職等を命ずる。

② 社員は、前項の場合、正当な理由がなければこれを拒むことはできない。

③ 出向を命じられた社員の取扱いについては、出向規程の定めるところによる。

第二九条(事前通知)

会社は、社員に転勤、転職、降職、出向又は待命休職を命ずる場合には、事前に文書をもって通知する。

原告は、右就業規則二八条三項に基づき、別紙(5)のとおり、出向規程を定めた。

原告が新たに設けた出向制度は、社員の同意を要件としない点で国鉄時代の派遣制度とは異なる。

(二) 昭和六二年五月一二日、原告秋田支店総務部人事課長、同課要員係長成田俊二(以下「成田」という。)及び同部総務課労働係長野原多津美(以下「野原」という。)が、JR東日本の出向制度と題する書面を持参し、補助参加人、東鉄労及び鉄産労に対し、出向制度について説明するとともに、六月一日から出向を開始するので、二週間前に該当社員に対し事前通知を出すこと、通常の人事異動として発令すること、賃金は原告の基準で支給し、減給の保障はすると伝えた。これに対し、補助参加人は、本人の同意が必要であり公募をすべきであって、これらについては、本社・本部間でも交渉するが、補助参加人としても支店に申入れするつもりである旨述べたが、他の二組合は概ね了承した。

(三) 同日、国労東日本本部は、本人の意に反する出向には反対との立場に立ち、原告本社に対し、別紙(8)のとおり、団体交渉を申し入れた。

(四) 同月一四日、補助参加人業務担当執行委員藤枝隆博(以下「藤枝」という。)が、原告秋田支店に赴き、本件団体交渉事項七号につき、野原、成田及び総務課労働担当主席千田(以下「千田」という。)に対し、団体交渉を求めた。

野原らは、右事項のうち、解明を求める部分は、説明をすれば分かるものなので、団体交渉の場とは別に説明の場を設けてもよい、協約の締結を求める部分は、就業規則又は出向規程の変更が必要になるが、支店にはそのような権限はないので、国労東日本本部に上申し、原告本社と交渉してもらいたい旨述べた。これに対し、藤枝は、六二年協約に出向の基準に関する事項は団体交渉事項として明記されているのだから、本社とともに、地方でも並行して交渉し、文書で確認をとっておく必要がある旨反論して、結局折り合いがつかず、藤枝は、組合としても再検討するが、いずれにしても不明な部分を解明できる場は設けてもらいたいので、期日は後日連絡すると述べ、野原らは、当日は右交渉事項を記載した書面は受領せず、写しをとったのみで終わった。

同月一八日、藤枝は、再び口頭で野原らに対し、七号について団体交渉を申し入れたが、前同様拒絶された。

(五) 同月二二日、原告本社において、原告と国労東日本本部との出向の基準についての団体交渉が行われ、本部が、出向は、公募をベースとし、足りない場合に更に手立てを考えるとか本人の同意を前提とするなど、本人の希望を尊重すべきこと、出向の基準は団体交渉事項であり、就業規則より具体的な基準を協約で定めることなどを求めた。これに対し、原告は、出向は、人事、任用の一環として人事考課の中で個々的に判断していくものであり、就業規則、出向規程に示されている以上の基準にはなじまないと答えた。本部は、出向の基準に関する考えを提起するので、検討し、それまでは出向を実施しないで欲しいと要望した。

(六) 同月二五日、同本部は、原告本社に対し、別紙(9)のとおり、出向の基準について申し入れ、翌二六日、右両者間で出向についての二回目の交渉が行われた。この席で、原告は、右申入れについて、出向は業務上の必要性から行うもので、人事の一環であるとの立場から、(1)募集により行う考えはない、(2)強制・強要しないとの点は、出向規程により原則一四日前までに事前通知を行い、苦情があればルールに則って取り扱う、(3)募集により必要要員に満たない場合につき、募集を前提にしないので再募集はせず、社員の生活状況、通勤時間・通勤距離等は、前広にデータをとることもあるが、今回提示の就業規則、出向規程で扱う、(4)復職につき、本人の心身の故障等の場合、本人の事情や受入れ会社の都合等を総合的に勘案し判断する、(5)期間につき、原則三年以内とするのは、出向の目的が関連会社の指導・育成、民間企業にふさわしい人材の育成を図ること等にあり、この程度の期間は必要と考えたものであり、二年ということもありうるが、延長は出向規程三条に準じて扱う、また、(6)賃金の支給につき、出向先基準と会社基準(JR基準)があるが、出向社員に対する賃金の支給基準は、出向先での業務内容、出向先の賃金水準等を勘案して決定する旨回答して、右のような出向の目的、期日及び取扱い方(出向期間及びその延長並びに賃金の支給基準)について記載した関連会社等への出向の推進についてと題する書面を交付し、就業規則、出向規程及びこの取扱いによって、六月一五日以降出向を実施したい旨述べた。

これに対し、本部は、本人の希望に即した人事にするよう求めたが、原告は、あくまで人事の一環として取り扱う旨述べ、結局本部が、原告の考え方を持ち帰って検討するので、原告も本部の言い分を検討されたい、引き続き交渉していきたい旨述べて、この日は終わった。

(七) 同年五月二八日、原告は、東鉄労、鉄産労、JR東日本鉄輪労働組合(その後管理組合として東鉄労に所属)及び鉄道医療協議会と、右原告提示に沿った出向の取扱いに関する協定を締結した。

(八) 同月二九日、原告本社と国労東日本本部は、出向に関する三回目の団体交渉を行い、本部が、募集や本人の同意を条件とすることを求めたのに対し、原告は、人事を行う上で必要なデータは前広に把握するが、その都度の本人の同意は必ずしも必要とは考えていない旨主張して譲らず、必要な説明は済んだので、具体的な提起があれば引き続き交渉するが、六月一五日から出向を実施したい旨述べた。

(九) その後、原告は、秋田支店管内を含め、約一二〇名に対し、出向の事前通知を行い、国労東日本本部は、原告本社に対し、同年六月五日、(1)会社側は、出向の基準については団体交渉中であることをふまえて、今回の一連の事前通知を直ちに中止し、撤回すること、(2)会社側は、現在行おうとしている出向については、①出向先企業名と主な事業内容、②各企業別の出向対象者数と出向の期間、③それぞれの従事することになる業務内容と労働条件、④募集と応募の方法、⑤その他必要な事項について、直ちに団体交渉を開催して明らかにすること、(3)以上については、遅くとも、六月九日に予定した団体交渉の場までには明らかにすることを申し入れ、同月九日、四回目の交渉が行われた。

原告は、右申入れについて、(1)出向についての原告の考え方は既に説明したとおりであり、前回までにできうる限りの努力をし議論した上で、人事の一環として事前通知を行ったものであるから、中止、撤回をする考えはないが、今後も具体的な提起があれば議論したい、(2)①本部との交渉は出向の基準についてであり、右①は基準になじまないので、この場では差し控えるが、取りまとめ次第知らせる、②右②も後程明らかにするが、約一二〇名に対し事前通知を行い、期間はいずれも三年以内である。③右③は、個別具体的に本人に明らかにしたが、一括して取りまとめることは不可能である、④募集による方法はとらない、⑤その他事情が生じた時点で必要により明らかにしていきたい旨答えた。

これに対し、本部は、右(2)についても基準に入ると考えるが、①及び②は別の場でもまとまった時点で資料として出して欲しい、③は個々の労働条件とは違うと思うが、大綱を①②の関係で出して欲しい旨述べた上、別紙(10)のとおり国労の主張に即した社員の出向に関する協約案(国労案)を提示した上、出向対象者に国労組合員が多く含まれており、組合役員が出向を命ぜられると組合活動に支障が生ずるなどと追及したが、原告は、協定の締結には反対しないが、募集、本人の同意については応じられない、所属組合による人事ということはあり得ない旨答え、本部は、交渉の形骸化であり、重大な決意をせざるを得ない旨述べて、この日の交渉は終わった。

(一〇) 同月一六日、藤枝は、原告秋田支店総務課長に、本件団体交渉事項七号について改めて団体交渉を申し入れたが、同支店は、出向の制度的な部分は支店に権限がなく、また本社・本部間で交渉を行い相当程度議論を尽くした状況になっているので、支店として応じるわけにはいかないと答えた。

(一一) 同月一七日、国労東日本本部と原告本社は、五回目の交渉を行い、本部は、地方労働委員会において、委員会の決定がなされるまで出向命令の実施を留保し、これに従わなかった組合員に対し不利益を課さないことを求めるなどの勧告がなされたことを理由に、これを尊重して、委員会の決定が出るまで出向命令の実施を延期すること、出向の基準について組合側の提案に基づき誠意をもって交渉し、合意が得られるまでは事前通知を出さず、既に出されたものは撤回することなどを求めたが、原告は従前の主張を繰り返し、並行線を辿った。

その後、本部は、原告本社に対し、(1)会社は、地方労働委員会の勧告に従い、出向を中止すること、(2)六月一五日以降出向命令が出され、順次、出向先企業への赴任が行われているが、出向先企業での従事すべき業務内容及び労働条件などが不明確なまま出向が実施されており、これは、明らかに、労働基準法第一五条に違反した行為であり、これに強く抗議する、同時に、かかる違法な出向命令は、直ちに中止し、撤回すること、(3)組合側が提案している出向の基準について、早急に結論を得るよう、誠意をもって団体交渉に応じることを申し入れ、同月二二日、六回目の交渉が行われた。原告は、右申入れについて、(1)出向については、従前の説明のとおり実施するものであり、中止の考えはない、(2)出向を命ずるに際し、出向先での業務内容、始終業時刻、休憩時間、休日、出向期間等、できうる限り詳しく本人に明示することとしている、(3)国労の理解と協力が得られるよう誠意をもって対処しており、提案に対しても前回の交渉で原告の考えを明らかにした旨答えたところ、本部は、具体的なケースとして、千葉レールセンターに出向に行ったところその子会社だった。秋田のニホンケイセキ株式会社は暴力団のような会社だと述べ、出向先の労働条件、業務内容が明確にされておらず、地方で交渉したい旨述べた。これに対し、原告は、出向の基準に係る部分は本社・本部間で取り扱うべき事柄であり、そのあとは人事の一環として行うべきもので地方で扱うべきものはない、具体的な提起の内容にもよるが、基本的には本社が責任をもって対処する、明確な出向の出向ということはないが、グループ企業の場合出向先と就業場所が異なることもありうる、指摘の二点は調べるなどと答えた。そして、本部が改めて国労案の締結を求めたが、従前同様の回答がなされた。

(一二) 同月三〇日、藤枝及び国労秋田支部矢尾欽一書記長が、原告秋田支店に赴き、野原及び千田に対し、本件団体交渉事項八号を示して、団体交渉を申し入れたところ、同人らは、出向の根幹に関わるような解明事項や就業規則、出向規程の解釈を求める部分は、いつでも説明する、具体的な就労条件等は個々の社員に説明しているが、なお補助参加人が不明であれば説明する、本社・本部間の交渉で行うべき事項は本部に上申してほしい、苦情についてはそれなりのルールがあるので、それで処理すべきである旨答えて、団体交渉には応じられない旨述べたところ、藤枝らは、説明も含めて団体交渉で行うべきである旨主張し、物別れに終わった。

(一三) その後、国労東日本本部は、原告本社に対し、(1)地方労働委員会の勧告、要望に基づき、出向命令を撤回すること、(2)出向先企業における業務内容、具体的な労働条件について、団体交渉の席上において明らかにすること、なお、六月二二日の交渉において指摘した秋田及び千葉の問題についても団体交渉で明らかにすること、③組合側が提起している出向の基準について早急に結論を得るよう団体交渉を行うこと等を申し入れ、他方、原告は、国労組合員が出向に際し一斉に年次有給休暇(以下「年休」という。)をとり三日間出向先に行かなかったなどの例があるとして、予定されていた団体交渉を一時延期し、同年七月一六日に七回目の交渉が行われた。この席で、原告は、国労が、出向先の社長宅付近でビラを配る、出向先に対して出向を受け入れれば代議士が会社に入る旨迫るなどの脅迫的、威圧的行動をとったとして抗議してしかるべき措置を求め、右申し入れに対しては、(1)出向命令を撤回する考えはない、(2)出向先の就労条件は社員に対し明らかにしている、個別の問題をこの場で扱うのは必ずしも適当ではないが、調査した結果問題はない、(3)出向の取扱いに関する会社の考えは既に明らかにしたとおりである、(4)国労との団体交渉の準備中に組合員が年休の一斉取得等を行ったことは、信義に反するばかりでなく、原告と出向先の信頼関係、ひいては原告の社会的信用を失墜させるもので看過できないなどと述べた。本部は、威圧的行動の点は初耳であり調査する旨述べるとともに、個別の問題については、地方で交渉すべきである旨主張したが、原告は、この交渉は出向の基準についてのもので、個別の話はなじまないし、実態がどうかといった点は事実関係の問題なので別途説明する、具体的な労働条件は個々の社員に事前通知の際説明しており、万一実際と違うことがあれば支店等の人事担当課に照会してもらった方が早いし、個別には苦情処理制度もある旨述べて、交渉には応じられない旨答えた。

本部は、この日、(1)会社は、直ちに行政指導に従い、問題の解決にあたることを内外に明らかにすること、(2)合意のできていない出向については、直ちに取り消し、中止すること、(3)会社側が強く主張したとおりの信義誠実の原則に基づく、平和的な団体交渉によって、紛争の解決にあたる決意と努力を直ちに明らかにすることを申し入れるとともに、(4)出向に関する基準につき第二次案というべき社員の出向に関する協約案(国労案)を提起して検討を求めた。

同月二四日、八回目の交渉が行われ、原告は、右申入れについて、いずれも従前の説明のとおりであり、地方労働委員会の勧告、要望は委員会と会社の関係であり、出向を取消、中止する考えはない旨答えるとともに、国労案について、(1)出向について経営計画で明らかにすることはできないが、事前に分かる範囲についてはその範囲で概要を説明することはやぶさかでない、(2)労働条件は、現在も社員個人に対し具体的に説明しており本人の同意を得る考えはない、(3)現に強制、強要はしていないし、個々の社員の生活環境等については前広にデータを把握していく、(4)復帰後は原則としてもとの職場に戻すという約束はできないが、大方そうなると考えており、出向後の状況の変化については総合的に勘案して対処する、(5)出向の基準に関わる事項は今後とも本社・本部間で取り扱うべきであり、出向後の個々の問題は労働協約に則り苦情処理で扱うことになる、なお、労働条件の適用として地方での団体交渉になじむものは、場合によって交渉ということはありうる旨答え、出向は人事の一環であり、本人の希望は前広に把握するが、採用に際し包括的な同意を得ており、本人の同意を前提とすることはできないが、その点を除けば協約の締結は可能と思う旨述べた。本部は、地方で事前に交渉することはどうかと質したが、原告は、人事について交渉することはできない、運用面における概要は可能な範囲で必要に応じ中央又は地方で説明するが、協約の締結とセットである、具体的な労働条件の提起があれば、ふさわしいものについては地方での交渉を受ける用意がある旨答えた。また、本部は、ビラの配付や出向先企業に行った点について、そうした事実はあるが、出向をやめろなどと言ったことはなく、社会的に許容されるものと考えており、威圧的な文書も出ているようだが、国労は関与していない旨述べ、出向先へ団体交渉を申し入れる旨述べたのに対し、原告は、右の点は重大な問題であるという認識を示した。

右一連の本社・本部間の団体交渉(以下一括して「中央交渉」という。)には、補助参加人書記長今井伸も本部交渉委員として何回かは出席していた。

(一四) 同年九月三〇日、六二年協約の有効期間が満了し、原告と国労は無協約状態になったが、右両者は、同年一〇月一六日、出向先における一週平均労働時間数が四一時間一〇分を超える場合における賃金の特別措置に関する協定を締結し、表記の場合に差額相当額の賃金を支払う特別措置を行う(同年四月一日から実施)旨約したほか、同年一二月二八日、地域間異動の実施に関する覚書及び地域間異動に伴う賃金の措置に関する協約を締結し、地域間異動(東北地域本社、盛岡支店、秋田支店、新潟支社及び長野支社の営業範囲にある全地方機関から、東京圏運行本部、高崎運行部、水戸運行部及び千葉運行部の営業範囲にある全機関の現業機関への異動)の実施(なお、実施に際しては、組合が人選に当たり本人の意向を尊重されたいなどの要望をし、労使間で協議がなされた経過をふまえることとされた。)及び実施に伴う寒冷地手当、別居手当及び都市手当の扱い等について約した。

(一五) なお、原告の各支店に対応する各地方本部からも、補助参加人と同様の団体交渉の申入れがなされた。

5  本件命令に至る経緯等

(一) 原告秋田支店においては、具体的な出向先が決まると、出向先会社名、業務内容、出向予定数及び期間を記載した出向の概要についてと題する書面を組合に交付するとともに、出向予定者に対する事前通知の際、別紙(11)のとおり、出向先の就労条件等についてと題する書面を交付して、出向先の概要を知らせる扱いにしていたが、昭和六二年六月四日、同支店長名で、国労組合員六名を含む同支店の一〇名の社員に対し、同月一九日付けの出向の事前通知がなされた。

(二) 同月九日、補助参加人は、被告に対し、出向に係る団体交渉の開催についてあっせんの申立てを行った。

(三) 同月一二日、同支店は、右事前通知をした者に対し、説明会を開くとともに、出向制度の意義及び対象者、出向の目的、発令、期間、所属、賃金の取扱い、勤務、復帰箇所、年休の取扱い、出向期間中の勤続年数、表彰・懲戒、業務災害・通勤災害、被服類、福利・厚生、共済組合関係及び共済貯金の取扱い、旅費並びに乗車証等について記載した出向のしおりを配付して、労働条件等の説明をしたほか、出向についての相談に応ずる担当者を紹介する相談員のご案内と題する書面を配付した。

なお、右配付資料や右(一)の書面は、原告秋田支店において作成されていた。

(四) 同月一六日、同支店長名で、国労組合員八名を含む同支店の一六名の社員に対し、同年七月一日付けの出向の事前通知がなされた。

他方、補助参加人は、同支店に対し、右(二)のあっせんの結果が出るまで出向を延期すること等を申し入れた。

(五) 同月一七日、国労組合員小野公宏及び平沢直四郎が、出向の事前通知について、国労が現在団体交渉を申し入れているところであるのに、これらの状況を考慮せず、本人に対する打診もなかったなどとして簡易苦情処理会議に申告したが、同会議(原告側は秋田支店人事担当課長浅野義次及び野原、組合側は藤枝及び国労秋田支部書記長矢尾欽一)は、同月二五日、今回の出向休職の発令は、人材の育成等を目的とした人事運用であり、苦情の申告理由に具体的なものが見当らないとして、いずれも却下する旨の裁定をした。

なお、原告秋田支店管内における出向発令に伴う苦情処理制度の申告は、簡易苦情処理が、昭和六二年度七件、昭和六三年度一四件、平成元年度二六件で、裁定結果はいずれも却下であり、この間の苦情処理の申告は零件である。

(六) 同月一九日、同支店長名で、右(一)の被通知者らに対し、出向の発令が行われたが、この中にニホンケイセキ株式会社への出向者二名(いずれも国労組合員)が含まれていた。

また、同日、新たに、国労組合員一名に対し、同年七月六日付けの出向の事前通知が行われた。

(七) 右(二)の申立てに基づき、被告において、同月二〇日第一回のあっせんが行われ、同月二四日、補助参加人はあっせんの事項を出向命令の撤回に変更し、同月二九日、第二回のあっせんが行われたが、労使双方の歩み寄りがみられず、あっせんは打ち切られた。

(八) 同年七月一日、同支店長名で、右(四)の被通知者らに対し、出向の発令が行われた。

(九) 同月二日、補助参加人は、被告に対し、原告及び原告秋田支店を被申立人として、被申立人が正当な理由なく本件団体交渉事項についての団体交渉を拒否し、国労及びその組合員を敵視する姿勢で出向制度を名目にして国労組合員を原告から排除し、国労組織を弱体化と脱退攻撃に悪用しており、労働組合法七条一ないし三号の不当労働行為に該当するとして、被申立人は、(1)補助参加人組合員に対する同年六月一九日及び七月一日発令の出向並びに六月一九日付けの出向を命ずる事前通知を撤回し、新たな出向の発令をしてはならない、(2)補助参加人組合から同年五月一四日及び六月三〇日に提出されている本件団体交渉事項の議題につき、早急に団体交渉を開催すること、(3)このたびの不当労働行為の事実について陳謝し、補助参加人に対する陳謝文を、本命令後、三日以内に手交するとともに、同文のものを縦一メートル、横1.5メートルの白紙に鮮明に墨書きし、原告秋田支店入口及び全職場の見やすい場所に、一〇日間掲示しなければならない旨の救済命令を求める申立てをした(秋地労委同年(不)第二号)。

その後、被告は、右申立てから、出向に関する部分を分離し、団体交渉拒否に関する部分(同号―一)について、審査を行い公益委員会議の合議を経て、平成元年九月二六日、(1)原告に対し本件団体交渉事項についてのすみやかな団体交渉を命じ、(2)陳謝文の手交及び掲示の申立てについては、右(1)の救済で足りるとしてこれを棄却し、(3)原告秋田支店を被申立人としている点は、労働組合法七条にいう使用者は、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要するところ、支店は原告の組織の構成部分に過ぎず、法律上独立した権利義務の帰属主体ではないから、使用者には該当せず、本件申立ては原告に対してなされたものとみて原告のみ被申立人として表示する旨の本件命令をなした。

(一〇) 右命令書は同年一〇月三日に原告に交付され、同月一二日補助参加人は、原告秋田支店に対し右命令の履行を求める申入れを行ったが、原告は、右救済命令は違法であるとしてこれに応じず、同年一一月一日、当裁判所に対し、右救済命令の取消を求める本件訴訟を提起した。

補助参加人は、同月二〇日及び一二月七日、被告に対し緊急命令の申立てを上申し、被告は、同月一五日、秋田地方裁判所に対し、原告を被申立人として、被告申立人は、右訴訟の判決が確定するまで、右(九)の命令に従い、右(九)(1)のとおり履行しなければならない旨の緊急命令の申立てをした(同庁同年行ク第二号)。

6  新団体交渉をめぐる経緯

(一) 昭和六二年一〇月一日、補助参加人は、原告秋田支店に対し、出向に関する事項を含む八項目について団体交渉を申し入れ、同月三〇日及び一一月七日の交渉が行われたが、配転及び出向に関する事項については触れられず、同年一二月八日、ニホンケイセキ株式会社に対する出向についての団体交渉を申し入れたのに対しても、交渉は行われなかった(同月二八日に同社への出向者に対し、出向が免ぜられた。)。

また、右両者間では、国労組合員の懲戒処分をめぐる団体交渉が行われたが、昭和六三年三月九日、補助参加人が改めて配転及び出向について交渉を求めたところ、応じられなかった。

同年八月一〇日、若林隆彦の出向をめぐる団体交渉が行われ(秋田支店としては、本来苦情処理制度で扱うべき事項であるが、労働協約が失効中のため、交渉に応じたものである。)、事前の公募、打診の有無、出向先の労働条件の説明方法、同人を選定した理由、出向終了後の現職復帰、出向先の労働時間等について交渉がなされた。

(二) 原告と国労東日本本部は、同年一一月二八日、労使間の取扱いに関する協約(有効期間平成二年九月三〇日まで)を締結し、(1)団体交渉は、本社及び秋田支店等の地方において、出向の基準に関する事項等について行うこと、(2)組合員が、労働協約及び就業規則等の適用について苦情を有する場合は、後記(3)の場合を除き、その解決を苦情処理会議に請求することができ、苦情申告者、会社及び組合は、苦情処理の結果を遵守しなければならないこと、(3)組合員が、本人の出向等についての事前通知内容について苦情を有する場合は、その解決を簡易苦情処理会議に請求することができ、苦情申告者、会社及び組合は、簡易苦情処理の結果を遵守しなければならないこと等は、概ね六二年協約と同様に定められた。

昭和六三年一二月一五日、原告秋田支店と補助参加人は、労使間の取扱いに関する協約の適用に関する覚書を交換したが、その前文でも、右両者は秋田支店固有の事柄について協議等を行うものとする旨謳われていた。

(三) 平成元年一二月二〇日、補助参加人は、原告秋田支店に対し、出向先の労働条件等に関し、文書で団体交渉を申し入れたが、その前文に「出向に関して会社はこれまで団体交渉を拒んだままとなっている。」旨記載されており、応対した野原からこれまでいろいろ議論してきた経緯があるとして抗議されたため、翌二一日、改めて右記載を削除した新団体交渉事項八号により団体交渉を求めた。

これに対し、同支店も、出向先の具体的な労働条件、要望等が主体となっているとして交渉に応じることとし、労使の幹事間で日程を調整した上、平成二年二月一七日、交渉が開かれた。この席で、同支店は、基本について、(1)事前通知の際出向先の就労条件を書面で提示し、説明会でも話をしており、就業規則は企業秘密にもからむので個々に配付する考えはないが、他の方法については検討する、(2)勤務評定は社員管理の一環として行っており公表するものではないが、不利益な扱いはない、(3)出向先により資格を要する場合は、資格を有する者から人選し、資格のない場合は補助的な作業に就かせたり資格をとってもらったりしている、(4)特殊勤務手当はJR基準で支給している、(5)健康診断は出向先で実施し、著しく作業実態が異なる場合は必要により特殊健康診断を実施しているが、JRの健康診断を下回るものはない、(6)業務災害の認定は労働基準監督署であるが、業務上の災害については業務災害の扱いとして、事故防止の対策を立てており、事故防止懇談会を行う考えはない、(7)出向後健康状態を害するなどして復職を希望する場合は、出向先と協議して決定する、(8)年休の制度はJR基準であるが、取得手続等は出向先による、(9)通勤手当はJR基準である、(10)出向後は、出向先で得たノウハウを生かせる適材適所で配属先を決定する、(11)広域出向の復帰発令は、原則的には就業規則どおりだが、実態としてはできるだけ早く連絡する、(12)就労条件は十分説明しており、問題はないと考えるが、業務上の必要により変化が生じた場合は、出向先と協議して対応する、(13)秋田支店に相談コーナーを設けているほか、支店に来られない者については電話で対応しているなどと回答した。補助参加人は、右(2)につき横手精工株式会社で勤務成績は上位であったのに、年末一時金が五パーセントカットされたこと、右(3)につき東北交通機械株式会社で無資格者が作業に従事していること、右(4)につき同社における剥離、サンダー作業について手当が支給されないこと、右(5)につきアスベスト、塵肺、鉛検査を実施すること、右(8)につき年休を理由なく認められない場合や原告で認められているのに出向先で認められていない場合があること、右(9)につき横手精工株式会社に勤務する者が、自宅から同社まで自動車で通っているのに、通勤手当が最寄り駅までしか支給されないこと、右(10)につき検修関連会社の出向者が象潟駅の飲食店に配属されたこと等を指摘して議論がなされ、同支店は、通勤手当については、就業規則の改正を伴い全社的制度に関わる問題であり、現在本社に申請中である旨述べ、その後、各出向先別の交渉がなされた。

(四) 同年七月一二日、補助参加人は、原告秋田支社に対し、新団体交渉事項一九号により団体交渉を申し入れたところ、同支社は、この事項は、ほとんどが具体的な出向先をあげて個々の社員の労働条件や要望、問題点等の解明を求めるものであるとして、団体交渉に応じることとし、なお本人の同意、打診を求めるなどの部分もあるが、特に除外することなく、団体交渉の場で説明することとして、幹事間で日程を調整した。

同年八月七日に交渉が行われ、同支社は、基本について、(1)民間会社となって四年目を経過しているが、出向の目的にかかわりはなく、定年延長制度に伴う出向先の確保、広域出向の開拓等も図っていきたい、(2)出向者は、受入れ会社の条件に基づき人選しており、恣意的な人選はない、(3)広域出向も通常の人事運用であり、出向終了時は通常七ないし一〇日、やむを得ない場合は五日前に事前通知をしている、(4)出向は出向先の条件に見合った人選をしており、復帰については面談等を通して総合的に判断している、出向先は必ずしも原告と関連性があるものとは限らない、(5)出向は通常の人事異動と同様であり、受入れ条件等から総合的判断で行っている、(6)本人の希望によって復帰させることはないが、健康状態や医師との相談によって判断する、(7)現場長と連携をとって説明するよう指導しているが、すべてについて説明することはできないので、説明会等で理解してもらいたい、パンフレットの配付等もできる範囲で行う、(8)就業規則は企業秘密であり、規則の提示等は困難である、(9)相談コーナーを設けるなどしてアフターケアに努めている、(10)定年延長の出向も通常の出向と同様であるが、年齢と労働条件は考慮し、必ずしも通勤できる範囲とは限らないが現在の出向は配慮している、本人の希望だけで出向先の変更はできないし、原則として定年まで変更はないが、出向先の経営状況によって出向契約が破棄されるような場合は、新たに発令する、定年延長の意思表示の際本人と面談し、出向先の希望を聞きながら発令している旨答えた。補助参加人は、右(3)につき復帰先によっては住宅事情の変化が伴うので、就業規則にとらわれず事前の打診が必要ではないか、右(5)につき本人の希望を尊重することはできないか、自動車通勤の場合でも実情に合わない通勤手当しか支給されていないから、JR基準(通勤手当)の範囲内で人選してほしい、右(6)につき出向先の形態、家族の病状、治療条件等によっては家族に著しい負担を強いる場合がある等と質したところ、同支店は、右(3)につき、復帰先の決定については、本人との面談や希望調査は行っており、ほとんどの場合はもとの職場になっているが、要員需給の関係から必ずしも希望職場、もとの職場にはならないものの、復帰する職場は本人が知っている場合もあり、大きな問題にはなっていない、右(5)につき場合によっては希望者が特定の出向先に殺到することもあるし、そうした場合もいちいち希望を尊重してはいられない、原告に勤務している場合の通勤手当は通勤手段等を考慮しておらず、出向に限った扱いはできない、右(6)につき指摘のような場合はケースによって判断するなどと答えた。

その後、各出向先ごとの交渉に入ったが、長引いたため、一部は、同年九月五日に引き続き行われた。

二争点1(取消の利益)について

1 特定事項に関する団体交渉の拒否による労働委員会の救済命令についての取消訴訟の係属中に、当該事項について団体交渉が行われ、これが妥結し、あるいは少なくとも誠実な交渉が尽くされるなど、右命令の内容が実現されて、命令がその目的を達成した場合は、使用者が、右団体交渉の実施又は妥結に際し、取消訴訟の結論が出るまでの暫定措置とするという留保をつけるなどの事情がない限り、当該命令はその基礎を喪失し実質的拘束力を失うというべきであり、当該命令を取り消す法律上の利益はなくなるものと解するのが相当である。

2  原告秋田支店又は支社が、補助参加人と新団体交渉を行ったことは前判示一6のとおりであり、これが実質的に本件団体交渉事項について団体交渉を行ったものとみ得るとすれば、特段の留保もないのであるから、原告の主観的意思に関わらず、本件命令は既に履行され、その取消を求める利益もなくなったというべきところ、本件団体交渉事項と新団体交渉事項は、出向に関するものという点で共通性を有することは明らかであるし、一部重複した文言が存することは原告も自認するところである。

しかしながら、前者は具体的な出向先には全く言及されていないのに対し、後者は基本という事項の後に個々の出向先の問題を極めて具体的に取り上げていることに加え、前者は、出向について本人の同意を前提とし、あるいは意思を尊重して強制、強要にわたらないことを求めているのに対し、後者は本人の同意、打診をはじめ事情を考慮することといった表現にとどまっていること、殊に前者七号は出向に関する協約の締結を求めるとされているのに対し、後者は少なくともこれが明示されていないことなど、両者は、その事項自体総体的には異なっているというべきであり、前判示の後者についての交渉の経緯からみて、実際の交渉としても具体的な出向先を巡る問題についての交渉が主だったといわなければならない。

結局、原告としては、新団体交渉は個々の出向先における極めて具体的な問題についての交渉の場であるとの認識に立ってこれに臨んだというべきであり、出向発令前で本人の同意、公募制を求めた本件団体交渉事項七号はもとより、出向が現実化した段階で、発令に当たっての基本的な要望を出したと見られる八号とも交渉の内容は相当異なっているとみるべきである。

従って、後者について団体交渉がなされたからといって、前者について団体交渉がなされたものとみることはできず、本件命令を取り消す利益は失われていないというほかはない。

三争点2(本件命令の違法性)について

1  地方における団体交渉権について

(一) 本件命令は、原告に対し、本件団体交渉事項について、補助参加人との団体交渉を命じたものであるが、これは、右事項が秋田支店における団体交渉権の範囲内のものであると判断したものであることが明らかである。

(二) ところで、前記のとおり、原告と国労東日本本部の間の六二年協約には、団体交渉は本社及び地方において行うとの定めがあり、地方の一つに秋田支店が掲げられている。

右協約の意味するところは、国労東日本本部の下部組織であるが、それ自体として独自の実体と組織を有し、労働組合法五条の要件を満たした一個の労働組合であると認められる補助参加人に秋田支店を交渉場所とする団体交渉につき当事者資格を与えるとともに、秋田支店長及びその委任する職員を秋田支店を交渉場所とする団体交渉の原告側担当者とすることにあると解される。

次に、六二年協約には、団体交渉事項が挙げられているが、本社における団体交渉事項と地方におけるそれには文言上何ら区別がない。

しかしながら、補助参加人のような下部組織は、もともとそこに組織されている労働者の利益を代表するものであり、また、補助参加人は本部の統制に服するものであるところ、本部は原告に雇用され本部に組織されるすべての労働者の労働条件について原告と交渉する権限を有し、一方、地方交渉における原告側担当者である地方の支店長の決定権には自ら限度があるのであるから、地方における団体交渉事項は、原則として、その地方組織の組合員に関する事柄で、通常であればその支店長に実質的決定権限があるとされる事項に限られると解される(従って、本社が、合理的理由もなしに支店長の決定権を制限しても、通常支店長に決定権があるとされる事項は地方交渉事項というべきである)。

六二年協約は前記のとおり、明文で本社、地方の交渉事項を区別していないが、地方交渉に右のような本来的制約があることを当然の前提としたものと解するのが相当である。六二年覚書が、団体交渉事項は秋田支店固有の事柄といっているのは、このようなことを相互に確認したものとみることができる。

(三) 被告及び補助参加人は、六二年協約において団体交渉事項につき本社と地方で文言上の差異がないこと、本部が補助参加人の交渉について異議を述べたことがなく、かえって中央交渉において地方で交渉したい旨述べるなどしていること、中央交渉において地方の具体的な出向の問題が取り上げられていることなどから、本部と補助参加人間に交渉権の明確な配分はなく、相互に留保され、秋田支店に勤務する労働者の労働条件については補助参加人の交渉権に制限はないとみるべきである旨主張するが、そもそも下部組織の交渉権に制約があるのは、協約をまたず下部組織の前記のような目的及び性質上当然のことというべきであるし、この制限は、本部の意思如何によって左右され得るものでもない。また、本社・本部間の交渉であれば交渉権の制限はないのであるから、中央交渉において地方の事柄が取り上げられたとしても、別段異とするものではない。

もっとも、通常支店長限りで決定できないような事柄であっても、その地方特有の事柄で、他の地方では未だ生起していないものであって、いきなり本社・本部間の交渉をするよりは、地方の交渉により、実情を明らかにし、問題点を把握することが労使における問題の解決に有効であるものについては、例外的に、それを地方交渉事項と解する余地はある。

また、地方交渉における使用者側交渉担当者が交渉事項について労働協約締結の権限を有していない場合であっても、当該交渉事項について決定権を有しているのであれば、団体交渉には応じた上、合意が成立したときは協約締結権者に具申して、協約とするよう努力すべきであって、協約締結の権限がないことから、直ちに交渉権もないということはできない。

(四) 本件団体交渉事項について検討する。

(1)  本件団体交渉事項は、いずれも、原告が新会社発足に伴って実施しようとした出向に関するもので、その内容からして六二年協約にいう「出向に関する基準」についてのものと認められるところ、前記認定のとおり、秋田支店職員の出向については、秋田支店長が発令者であるから、就業規則、出向規程の下で、実際に誰をどこに出向させるか、その人選に当たってどの程度本人の意思を考慮するかの点も含め、出向の実施については支店長の裁量に委ねられるところが大きく、本件団体交渉事項は概ね秋田支店長の有する一般的職務権限の範囲内の事項と認めるのが相当である。

しかしながら、一般的職務権限に属する事項であっても、それがその他の地方にも関連し、かつ重要なもので、本社として、全社的、統一的に対応せざるを得ないような事柄については地方の支店長の権限は制限され、支店長には実質的決定権限がないのが通常である。

(2) そこで、本件団体交渉事項七号の団体交渉の申入れが通常地方の支店長に実質的決定権限のあるとされる事項についての団体交渉申入れであるかについて検討する。

右七号は、解明を求める部分と、要求に対する解決とその要求に沿った労働協約の締結を求める部分からなり、更に、解明を求める部分は主として出向に関する就業規則の定めと出向規程の解釈につき説明を求めるものとなっており、解決と協約の締結を求める部分は、出向は公募を原則とし、本人の同意を前提とすること、出向期間は一年とし出向後は元の職場に戻すことなどを中核としている。

ところで、前記認定のとおり、原告は、新会社発足に当たり、余剰人員対策と社員の意識改革が重要であるとの認識に立ち、積極的に社員の出向を実施することを企図し、従来国鉄で行われていた同意を要件とする派遣制度を廃し、配置転換と同等のものとして出向を扱う出向制度を就業規則に設け、新会社発足後間もない昭和六二年六月から全社的に出向を実施しようとしており、一方、これに対し、国労東日本本部は、こうした出向に反対する立場から同年五月一二日には、出向は団体交渉により決定すること、団体交渉により出向の基準が決定されるまでは出向を行わないことを求める団体交渉の申入れをし、以後原告本社と本部との間で出向につき公募、同意を要件とするか否かを中心とした団体交渉が重ねられ、補助参加人以外の地方本部も補助参加人と同様の申入れをした。

右のような経緯と本件団体交渉事項七号の申入れの内容からすると、右七号の申入れの中核は、出向者の選定については公募を原則とし、かつ、国鉄時代の派遣制度と同様に本人の同意を要件とすることを要求するところにあるというべきで、しかもそれは原告が重要な施策として全社的規模で統一的に実施しようとしていた出向制度の根幹に触れるものであると認められ、また、同様の団体交渉申入れが、本部や補助参加人以外の各地方本部からなされていたというのであるから、本件団体交渉事項七号は全体として、通常支店長限りでは実質的決定ができないような事柄であるというべきである。

してみると、本件団体交渉事項七号は、全体として地方における団体交渉事項と認めることはできず、右事項についての団体交渉申入れの拒否には正当の理由があるというべきであり、本件命令のうち本件団体交渉事項七号につき救済を命じた部分は取消を免れないというべきである。

なお、被告は、交渉事項に支店の権限外のものがあっても直ちに交渉を拒否できるものではなく、権限者を出席させあるいは権限者と諮りつつ適宜の措置をとるなどのことが求められると主張するが、支店長に決定権、従って交渉権限はあるが協約締結などの処理権限はないという場合であれは格別、交渉権限自体もない場合には、使用者側にそのような措置を義務付けることはできないといわなければならない。本社・本部間の交渉にすべて委ねるべきである。

また、被告は、労働委員会には広汎な裁量があるとして、仮に義務的団体交渉事項でなくても、団体交渉事項の整理のための団体交渉を命ずる救済命令もなしうると主張するが、不当労働行為が成立する場合にいかなる救済命令をなすかについては、労働委員会に裁量が認められるものの、事実認定及びそれが不当労働行為に該当するかの法律判断には裁量の余地はなく、従って、不当労働行為に該当するという前提判断に誤りがあれば、その救済命令は取消を免れない。

(3) 次に、八号について検討する。

前記認定の事実によれば、本件団体交渉事項八号の団体交渉申入れに至る経緯は、原告は昭和六二年五月、同年六月から出向を開始することを国労東日本本部ほか原告の従業員により組織される労働組合に説明し、各組合との団体交渉を経たのち、東鉄労、鉄産労などとの間では同年五月二八日、原告の提示に沿った協約が成立したが、国労東日本本部との間では同月二二日、二六日、二九日、同年六月九日、一七日、二二日、同年七月一六日、二四日と八回にわたる交渉が持たれたものの、国労東日本本部は、主として、出向は公募を基本とし、本人の同意を前提とすることや就業規則よりも更に具体的な出向の基準を労働協約で定めること、出向の期間を一年以内とすることなどを求め、一方、原告は、出向は人事の一環として行うものであるから、募集方式をとることや同意を前提とすることはできず、また、就業規則、出向規程のほかに具体的基準を定める労働協約を締結する必要はないとの立場を崩さず、合意が成立しないまま、原告は同年六月からの出向予定者約一二〇名に対し出向の事前通知を行い、秋田支店においても、同月四日、一〇名の社員に対し事前通知を行い、同月一二日の当局側の説明会を経て、同月一九日、出向の発令がなされ、更に、同月一六日、一六名の社員に対し同年七月一日付け出向の事前通知がなされるなど出向は既成事実化しつつあり、このような経過の中で、同年五月一四日、補助参加人は秋田支店に対し、同意を前提にすることなどを求めた本件団体交渉事項七号につき団体交渉の申入れをし、これが拒絶され、現実に出向がなされたのち本件団体交渉事項八号の団体交渉申入れをしたというものである。

また、本件団体交渉事項八号の内容は、鉄道事業と出向の関連性を明らかにする、出向期間を一年とすることなど、全社的一般問題も含まれてはいるが、大部分は、原告が就業規則、出向規程に基づいて出向を実施することを前提とし、疑問点の解明を求めるとともに出向についての要望をするものということができる。

右のような本件団体交渉事項八号の申入れに至る経緯、申入書の内容に加え、申入書の前文に、「秋田支店固有の問題も山積し、秋田支店内で解消しなければならない部分も多い。それは、出向先の就労条件の細部にわたる説明、出向の人選基準、事前通知のあり方、出向終了後の配属など不明確な問題がある。また、それによってトラブルが発生し、出向者が不満を抱えている現状にある」と記載されていることをも考慮すると、八号の団体交渉申入れは、全体としてみると、出向が秋田支店においても発令され、出向が既成事実化する状況のもとで、公募方式、本人の同意を求める本件団体交渉事項七号とは異なり、秋田支店においても進行しつつある出向を前提に、発令者である秋田支店長に対し、出向者の選出基準、本人の意思の尊重などの問題も含め、出向の現実の運用に関する事項について団体交渉の申入れをしたものと認めることができ、このような運用に関わる事柄は、七号とは異なり、通常、地方の支店長に実質的決定権が留保されていてしかるべきであるから、地方における団体交渉事項であると解するのが相当である。

2  原告は、本件団体交渉事項八号には、就業規則、出向規程の解釈や就労条件について質す事項が含まれているところ、個々の社員に対し説明すれば足りる事項は、団体交渉で行う必要はない旨主張する。

なるほど団体交渉が何らかの合意を目指すものである以上、一方が単に説明し、少なくともそれに対し疑義を質せば済むような事項は、本来的には交渉の対象ではないといえる。しかし、労働組合が説明を求める以上は、単に質問したいというだけの場合はむしろ稀で、実情を明らかにしてそれに対する組合の対処を検討し、労使間の交渉に反映させたいという場合が通例であって、就労条件のように労働者の関心が高い事項については尚更であるし、新団体交渉をめぐる経緯に照らしても、原告側が回答を示して済んでいる事項もあるが、多くは補助参加人が更に問題を提起するなどして議論が行われているのであり、本件団体交渉事項八号の中にある説明を求める項目についても説明すれば足りるというだけで団体交渉を拒否しうるということはできない。

3  原告は、本件団体交渉事項八号の4項は、苦情処理制度によって処理される問題で団体交渉事項ではないとする主張する。

一般的には、労使が労働協約を締結した以上、双方ともこれを遵守し履行する義務を負うことは当然であって、協約において紛争解決のため団体交渉と別個の方法が定められれば、それによるべきであるといわなければならない。

しかしながら、六二年協約に定める苦情処理制度は、対象たる苦情の内容や解決基準も漠然としており、労使同数の委員で構成される会議によって決せられ、使用者側が譲歩しない限り苦情は却下されざるを得ないこと等からすると、団体交渉に代替しうるものといえるか疑問であり、右のような苦情処理制度があるからといって、直ちに、団体交渉事項にならないとはいえない。

4  本件団体交渉事項八号の団体交渉申入れのころ出向に関する基準について中央交渉がなされていたことは前判示のとおりであり、同一事項について二重交渉のおそれが強いときは、使用者は、二重交渉を回避するため、各組合間で交渉権を調整、統一するまで、一時的に交渉を拒否できると解されるが、本件団体交渉事項八号は、前示のとおり、秋田支店における出向の運用に関するもので中央交渉と抵触することはない(本社・本部間で秋田支店固有の事柄について交渉することは可能であるが、中央交渉において原告は、この交渉は出向の基準に関するものであり、個々具体的な問題にはなじまない旨述べている。)というべきであるから、この点は、右八号について交渉を拒否しうる理由にはならないといわなければならない。

5  原告は、当該出向者が全員復帰しているにもかかわらず、今後のすべての出向について本件団体交渉事項に関する団体交渉を行うべき事情はなく、また、本件命令発令後の事情も国労自体が公募や同意に固執せずに、一部労働協約の締結に応じるようになっていることからすると、本件命令発令時において、既に救済の利益はなかったというべきであると主張するが、前記認定のとおり、本件命令発令時点では、原告は、補助参加人の団体交渉要求には応じていなかったし、出向をめぐる情勢にも基本的な変化はなかったのであるから、現実に出向を発令された労働者が復帰したとしても、救済の利益が失われていたとはいえず、また、本件命令の違法性の判断の基準時は発令時であるから、発令後の事情の変化も、前記判断を左右するものではない。

6  従って、本件団体交渉事項八号についての団体交渉申入れの拒否には正当な理由がないというべきであって、本件命令のうち八号について救済を認めた部分に違法はないことになる。

四結論

以上によれば、本件命令中本件団体交渉事項七号(別紙(1))について団体交渉を命じた部分は違法であるからこれを取り消し、その余の救済を命じた部分は適法であって本件請求中右部分の取消を求めるものは理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山本博 裁判官松吉威夫 裁判官神坂尚)

別紙 (1)

秋労申第七号

一九八七年五月一四日

東日本旅客鉄道株式会社秋田支店

支店長田沼睦雄殿

国鉄労働組合秋田地方本部

執行委員長三浦敬

申入書

出向に対する緊急の解明と要求について

五月一二日秋田支店から六月一日から実施する「JR東日本の出向制度」について説明を受けた。

出向に対する取り扱いについては、就業規則第二八条及び、出向規程に明示されてはいるが、国鉄労働組合としては、就業規則の意見聴取の時に、具体的な取り扱いについては「協定の定めによること」としてのべたところである。また、労働協約の第4章、団体交渉の第三九条(3)では、団体交渉事項として「出向の基準に関する事項」が明示されているのに、説明の際、「就業規則の内容に関わる問題であり、団体交渉の必要はない」と団体交渉を拒否をしている。

出向制度の内容が一方的に説明され、団体交渉も行われない中で、各現場では会社に対する不信が募っている。

多くの問題があるので、下記の点につて解明と要求を申し入れるので、早急に団体交渉を行なうこと。

1 解明を求める事項

(1)出向を命ずる選定基準と対象について明らかにすること。

(2)「正当な理由がなければ拒むことはできない」という際の「正当な理由」とは何をさすのか。

(3)「業務上の必要」があるのか。また、「業務上の必要」とはいかなる場合をさすのか。

(4)「原則として休職」とあるが、休職しない場合は、どのような場合があるのか。

(5)休職した場合としない場合の違いは何か。

(6)出向期間は、出向の目的により異なるので違うが、就業規則で出向手当を三年間とした理由は何か。

(7)出向中の社員証、職務乗車証、割引書の扱いを明らかにすること。

2 下記の要求に対して解決をはかり、「出向に関する協約」を締結されたい。

(1)出向は公募を原則とすること。

(2)出向を命じる際、本人の同意を前提として強制、強要はしないこと。

(3)出向先は通勤可能な範囲とすること。

(4)出向期間は一年間を限度として、ローティションを行なうこと。

(5)出向期間終了後は、出向前の職場、職名に復帰させること。

(6)就労条件に差異が生じた場合は、ただちに現職に復すること。

(7)出向規程第二条「賃金」の(出向先基準)において会社の基準賃金は保障すること。

(8)出向先の労働条件(賃金、勤務、労働時間、出向期間等)は、組合に明示し、差異が生じた時は協議すること。

(9)出向継続が困難となった場合は、本人の希望に基づき復帰させること。

(10)出向者の苦情については、地方対応機関と協議すること。

(11)出向の基準に関する団体交渉が整理されるまで、執行しないこと。

別紙 (2)

秋労申第八号

一九八七年六月三〇日

東日本旅客鉄道株式会社秋田支店

支店長田沼睦雄殿

国鉄労働組合秋田地方本部

執行委員長三浦敬

申入書

出向に対する細部にわたる解明要求について

すでに国労が出向問題で団体交渉の開催を申し入れていたにも関わらず、労使交渉を開かないままに、六月一九日から出向が実施されている。団体交渉を開催しない会社側の理由は「秋田支店に権限がない」「団体交渉事項ではない」としているが、秋田支店固有の問題も山積し、秋田支店内で解消しなければならない部分も多い。それは、出向先の就労条件の細部にわたる説明、出向の人選基準、事前通知のあり方、出向終了後の配属等々、不明確な問題がある。また、それによってトラブルが発生し、出向者が不満を抱えている現状にある。

したがって、下記の内容を貴支店に申し入れるので、団体交渉を開催し、問題の解決をはかられたい。

1 出向者の選出基準について明らかにされたい。

2 出向にあたっては本人の意思を尊重し、強制・強要にわたらないこと。

3 鉄道事業と出向の関連性と出向者が出向先で得た技術力、能力をどう活かそうとしているのか明らかにされたい。

4 事前に明示された就労条件と出向先の就労条件に差異が生じた場合は、団体交渉で解決すること。

5 出向規程第四条二には、「会社から指示された事項について、報告をおこなわなければならない」とあるが、その内容を明らかにされたい。

6 出向規程第八条には「出向社員の労働時間、休憩時間、休日、休暇等は出向先の規程による」とあるが、細部にわたる内容について明らかにされたい。

7 出向規程第九条、第一〇条には、出向社員の表彰及び懲戒は出向先の規程、ならびに定めによるとあるが、その内容を明らかにされたい。

8 出向規程第一六条、二について、出向先の規程がどうなっているか明らかにされたい。

9 出向規程一七条の業務災害保障等について、出向先の規程、定めについて明らかにされたい。

10 出向先の就業規則、規程など出向者に事前に提示されたい。

11 出向先の労基法三六条の締結に関する内容を明らかにされたい。

12 出向中の社員証、職務乗車証、割引券の扱いについて明らかにされたい。

13 出向先の就労場所について事前に明らかにされたい。

14 賃金受け取る際の勤務の扱いについて明らかにされたい。

15 出向前に発生した特別休日の処理について明らかにされたい。

16 出向前に支払われていた職務手当は、出向先でも該当するのか明らかにされたい。

17 出向終了後の配属箇所は、出向前の職場とされたい。

18 出向先は通勤可能な場所にされたい。

19 出向会社が倒産や経営に困難をきたした場合は、出向を解除されたい。

20 出向期間の上限を一年間とされたい。

21 出向の命令にあたって組合間の差別をしないこと。

以上

別紙 (3)

秋労申第八号

一九八九年一二月二一日

東日本旅客鉄道株式会社秋田支店

支店長長岡弘殿

国鉄労働組合秋田地方本部

執行委員長三浦敬

出向先の労働条件等に関する申し入れ

新会社発足してから今日まで出向が実施されていきているが、出向先において就業規則及び出向規則の解釈・適用に関する疑問点の解明や労働条件に対する諸問題が生じており、早急に解決されることが求められている。

出向は会社の権限において実施されてきている以上、その中で具体的に発生する地方固有の諸問題について、労使双方が協議をすすめ、問題の解決をはかることが出向者に責任ある労使の姿であると考える。

以上のことから、以下のとおり申し入れるので、早急に『労働協約』に基づき団体交渉を開催し、問題の整理・解決をはかることとされたい。

尚、秋田支店が誠意のない態度に終始した場合、出向先の権限に関わる事項について、直接申し入れを検討していることを申し添えておく。

【基本】

1 出向の「説明会」では、「出向のしおり」の配布だけでなく、出向先の労働条件の詳細について説明されたい。そのためにも、出向先就業規則等を配布されたい。

2 出向先の「勤務査定表」を明らかにし、不利益な扱いのないようにすること。

3 出向の人選においては、出向先の作業に必要な資格をもった社員を基本的に人選し、資格のない者を発令した場合は、資格等を取得させること。(例:玉掛け、危険物、クレーン等)

4 特殊勤務手当について、JR基準に準じて支払うこと、またJR基準に該当しない場合は、出向先基準で支給すること。(例:気吹き汚損作業、高所作業、アスベスト作業、騒音発生作業、剥離〈第二種有機溶剤・有毒〉及びサンダー〈垢、錆取り〉作業、サスメタル〈鉛作業〉、床上・床下清掃、薬槽掃除〈E台車装置〉、危険物取扱作業、ボイラー作業等)

5 出向者の健康状態の維持・管理を行なうため、健康診断を充実させ、健康調査等を実施すること。特JR職場の作業内容から著しく変更の伴う作業に従事する出向者、有害作業に従事している出向者には特段の配慮をすること。

6 業務が原因と認められる災害、傷害、病気が発生した場合は、ただちに調査を実施し、労働災害保障を適用すること。また、事故防止にむけた対策を立て、出向会社に対する指導をはじめ、出向者との事故防止懇談会等を開催すること。

7 出向後、健康状態を害し、病気休暇を取っている者、または生活状況などの理由により、復職の申し出があった場合は、努めて応じること。

8 年次有給休暇はJR基準に基づいて取得させること。年休が認められない場合、その理由を説明させること。また、半休制度を出向先でも適用させること。

9 通勤手当の支払基準と適用について明らかにし、自動車通勤者においてはかかる費用に見合った額とされたい。

10 出向を終了し、JR会社への復帰発令においては、本人の希望を尊重すること。

11 広域出向者の復職発令は転居が伴うことから、早目に復帰職場を出向者に伝えること。

12 事前の就労条件の説明と出向先の条件に差違が生じた場合は、その理由を明らかにし、条件が整うまで出向を保留すること。

13 人材開発(出向担当)は出向者の苦情について相談の場を設け、誠意をもって解決にむけ努めること。

【東北交通機械】

1 出向先は超過勤務が多いことから通常列車通勤者も自動車通勤になっていることから、実態に合った自動車通勤手当を支給されたい。また、いったん支払われた自動車通勤手当がなぜ支給されなくなったのか明らかにされたい。

2 気吹き(汚損)作業、高所作業、アスベスト作業、騒音発生作業、剥離(第二種有機溶剤・有毒)及びサンダー(垢、錆取り)作業に従事していることから、特殊勤務手当を支給されたい。

3 サスメタル(鉛作業)、床上・床下清掃、薬槽掃除(E台車装置)などの作業に従事した場合、東北交通機械の社員には手当が支給されているが、出向者には支給されていないので、作業の実態にあわせ、出向先基準で特殊作業手当を支給されたい。

4 重量物つり上げ作業は、玉掛けの資格が必要であるので、資格取得の機会を与え、資格取得までそれら作業に従事させないこと。

5 更衣室に関わる改善について

① 更衣室の個人貸与ロッカーにカギがないので個人貸与されたい。

② 18時以降は、作業場から更衣室までの照明が消され、大変危険であるので、退社時間まで照明を確保されたい。

③ 更衣室が雨漏りしているので至急修理されたい。

④ 更衣室の電灯を一箇所設置されたい。

⑤ 飲料水や夏に弁当のおかず腐ることがあるため冷蔵庫を設置されたい。

⑥ 冬期間の暖房器具として現在、小さい丸ストーブ一個だけであり、暖房状態が悪いので、蒸気暖房及び大型ストーブを設置されたい。

【厚木ユニシア】

1 出向者も厚木自動車社員と区別なく駐車場を使用できるようにすること。

2 残業、休日出勤の指示にあたっては、社員の意思を尊重し、厳しい労働条件を考慮した勤務作成を行うこと。

3 年次有給休暇は、本人の申請によって取得させること。また、理由もなく年休を認めなかったり、いやがらせ発言はつつしむこと。

4 夜間勤務手当について、厚木ユニシア社員と同じ基準で支給すること。

5 出向者は自動車通勤となっていることから、自動車通勤手当を支給し、厚木ユニシアと同じ基準で支給されたい。

6 昼休み休憩時間などに十分休養のとれる休憩所を設置されたい。

7 賃金支払において、勤務時間、作業内容、諸手当等が削除されている場合があるので、支払ミスのないようにすること。また、支払ミスを防止するため「個人別勤務及び賃金台帳」の写しなどを出向者に手渡しすること。

8 賃金の支払にあたっては、賃金袋を開口せず支給されたい。

【秋田鉄道事業社】

1 一交勤務については、労働時間を拘束二四時間、休憩九時間(休養四時間含む)、実働一五時間としているが、現場にある作業ダイヤ(基本的作業の手順表)や実働を調査したところ、休憩時間は九時間の内、休養時間四時間、休憩時間二時間の合計六時間までは作業ダイヤから読み取れるが、残り三時間がどこに明示されているのかまったくわからないので明らかにすること。

2 所定の労働時間を超え、休憩時間に食い込んでいる実作業時間については、超勤支払いや前もった休憩時間の変更など周知すること。

3 日勤の休憩時間は六〇分と説明をうけていたが、作業ダイヤでは四五分しか記入されていないので、残り一五分の休憩時間を明示されたい。

【木村スタンド】

1 勤務時間は、所定の労働時間を基本とし、超過勤務の上限は五〇時間以内とされたい。

2 年休については、本人の申請に基づき、取得させること。

3 JRの賃金規定「技能手当の支給基準」によれば「危険物取扱者の資格を有する者のうち、危険物の保安の監督をする者の指定を受け、危険物の取扱い作業に関する保安の監督業務に従事する者」には手当が支給されるとなっていることから、JRで定める技能手当(月額一五〇〇円)を支給すること。

【奥羽YKK】

1 自動車通勤できる者を前提に発令したことから、奥羽YKKと同基準で自動車通勤手当を支給されたい。(奥羽YKKでは、三〇キロ以上まで支払われており、最高額が一四、五〇〇円となっている。また、以前はYKK基準で出向者に支給されていた。)

2 超過勤務手当について、奥羽YKKでは一三〇/一〇〇となっているので、出向先の基準で支給されたい。

3 通院・子供の父兄参観等々の私用により、半日もしくは時間単位で遅刻・早退できる奥羽YKK制度を出向者にも適用されたい。また、本人の申し出により超過勤務手当からカットされることとなっているが、一時間当たり一二五/一〇〇カットとなっているので、当面の措置として一〇〇/一〇〇カット残り二五/一〇〇については、本人に支払われたい。

4 作業服は、夏服・冬服それぞれ一年に一着ずつとなっているが、着替えがないので、出向期限を考慮し、二年分まとめて貸与されたい(出向期間二年)・また、帽子・安全靴については、二着目から個人で購入することとなっているが、作業に必要な物なので貸与とされたい。

5 夏場は発汗作業となることから、風呂もしくはシャワーを設置されたい。

6 乾燥室を設置されたい。

【横手精工】

1 「出向先の就労条件等について」で休日の項目には「国民の祝日」と明示されていたが、出向会社では「国民の祝日」は休日指定されていない。休みたい場合は年休扱いとなり、勤務した場合一二五/一〇〇支給で代休制度はない。よってJRの事前説明どおり、「国民の祝日」を休日扱いとすること。

2 年次有給休暇についてはJR基準によるとしているが、出向会社では年間五日の「割当(計画)年休」制度があるため、会社の休日に「割当年休」が指定されているので、JR基準によりすべて「自由年休」とすること。

3 勤務形態が三交代勤務となっていることから、列車通勤が困難であるため、自宅から出向先までの自動車通勤を認め、出向会社の基準で支給すること。

4 特殊勤務手当、特殊手当、技能手当の支払においては、出向会社の基準で支給すること。

5 労働条件に問題が発生した場合は、ただちに出向者の苦情を調査し、説明及び改善されたい。

以上

別紙 (4)

秋労申第一九号

一九九〇年七月一二日

東日本旅客鉄道株式会社秋田支社

支社長長岡弘殿

国鉄労働組合秋田地方本部

執行委員長三浦敬

出向先の労働条件等に関する申し入れ

本年二月一七日に第一回の出向先労働条件について団体交渉をもち、協議をおこなってきた。しかし、いまだ未解決の問題や新たな諸問題が発生している。

よって出向先の労働条件について、以下のとおり申し入れるので、団体交渉を開催し、誠意をもって問題の改善・整理されることとされたい。

【基本】

1 これまで出向を実施してきた経過を踏まえて、今後将来にわたる出向のあり方、考え方を明らかにすること。

2 出向の人選についは、組合所属による恣意的な人選はしないこと。

3 広域出向については、転居が伴うことから、特に本人の意思の尊重や生活環境・健康状態などを考慮して実施すること。また、出向終了における事前通知は、一〇日以上の期間を設けること。

4 出向発令については、JR職場・職種・技術・経験と関連性のある会社・業種に出向させること。また、出向終了後は本人の意向を尊重し、出向会社での経験を活かせる職場・職種に復帰されること。

5 出向命令にあたっては、本人の同意、打診をはじめ、本人の生活環境、家庭事情、通勤事情など考慮した人選をすること。

6 出向期間中、本人の健康状態、家庭事情などから出向を継続できない場合は、本人の希望を尊重しJRに復帰させること。

7 出向発令の際、現場長は出向先労働条件など説明できる体制をはかること。

8 出向説明会では、出向先就業規則を提示し、出向会社の説明員を出席させること。

9 出向期間中、人材開発の出向会社訪問を継続して実施し、出向社員との面談等を実施すること。

10 定年延長の出向においては、本人の意思を尊重し、健康状態、通勤事情、JRの経験などを考慮した出向とすること。

11 定年延長の出向においては、基本的に自宅から通勤できる範囲とすること。

12 定年延長の出向においては、六〇歳定年までの出向期間となっているが、本人の希望により出向会社の変更を可能とすること。

【会社側】

〔東日本電気保安〕

1 休憩場所として各駅、保線区等の建物を確保すること。

2 自動車運転手当てを出向会社社員同様に支払うこと。

3 半休の取得を認めること。

4 取得期限切れした年休は買い上げされたい。

5 夜間作業が月平均八〜九回に及んでるので、社員の健康維持のため月四〜六回に制限すること。

6 機動力(自動車)にエアコンを装置すること。

7 JR同様に、「巡回監督旅費」(日額三〇〇円)を支給すること。

8 JRの在庫削減が関連会社に対する「材料庫」化され、無闇な作業の押し付けとなっているので、JR職場の材料の適正かをはかること。

〔奥羽YKK〕

1 会社への通勤は自動車使用となっているが、JRの通勤手当ての上限は距離二〇キロ、支給額九、六〇〇円となっており手当て額と実態に大きなへだたりがあるので、出向会社基準で支給すること。

2 超勤支給基準を出向会社基準一三〇/一〇〇とすること。また休日出勤の場合も一三〇/一〇〇基準で支給すること。

3 出向会社において半休制度を認めること。また、半休使用の事由は廃止すること。

4 通院・子供の学校行事等の私用により、半日もしくは時間休の場合、本人の申し出により割増賃金からカットされる制度となっているが、一時間あたり一二五/一〇〇カットとなっているので、当面の措置として一〇〇/一〇〇カットし、二五/一〇〇については支給すること。

5 帽子・作業靴について二着目から個人購入となっているが、作業に必要なものであるため会社負担とすること。

6 設備要求

① 夏場は発汗作業の連続であるため、入浴またはシャワー設備を完備すること。

② 洗濯後の乾燥室を完備すること。

〔(株)ウッズ〕

1 出向会社では創業約一年になるが、労働災害が一〇件発生し労働基準監督署が調査・指導に入っている。こうした実態を把握していたのか明らかにし、労働災害事故防止の観点から以下の事項を改善すること。

① 労働災害の発生件数、事故原因、対策等の内容について明らかにすること。

② フォークリフト運転など資格経験のないものまで従事させているので改善すること。

③ ボイラー作業員も加工作業に従事しているので中止すること。

④ 作業通路は労基署の指導のとおり八〇センチ以上に拡張すること。

2 労働条件の著しい変更や危険作業に従事していることから、出向者には作業に必要な教育訓練を実施すること。

3 他の職場への助勤の場合も、教育訓練を実施すること。

4 始業時刻は八時三〇分からとなっているが、実際は八時二〇分体操、八時二五分朝礼及び作業打ち合わせとなっているので、就業規則どおりとすること、できない場合は、始業時刻の変更手続きを行なうこと。

5 終業時刻は一七時三〇分までとなっているが、出向会社は一七時五〇分まで勤務させ、なおかつ一七時五〇分を超えないと超勤支給としないと説明していることから、勤務時間の厳正と超勤支給をJR基準と同様とすること。

6 通勤手当てについて、人事課より「現物支給など含めて検討する」との説明を受けたが、その後の経過について明らかにし、実態に即した通勤手当てを支払うこと。

7 年始・盆の休暇については、一月二日・三日・八月一三日は会社の公休日、一月四日・五日・八月一四日・一五日・一六日は年休使用と説明されている。年休は本人の請求により取得する性格のものであることから、会社指定を中止し、年始・盆の休暇はすべて会社の公休日とすること。

8 会社制度にある時間休の使用について、「労働条件は出向会社基準」どおりに取得することを認めること。

〔横手精工〕

1 出向者に係る協約は出向会社の就業規則、休日カレンダーに拘束されるが、各種協定協約締結において、会社組織の親睦会代表者と締結している。しかし、親睦会には社長も名をつらねており、法律違反の疑いがもたれ労基署からも指導を受けている実態にあるので、正式な協約等締結とすること。

2 出向は賃金規定がJR基準、労働条件が出向会社の就業規則となっている。JRと出向会社との労働時間の差について特別措置で賃金が支給されているが、完全三交代勤務はJRに存在しないばかりか、手当てについても横手精工二二、〇〇〇円支給、出向社員昼勤二四〇円、晩金三四〇円、夜勤四一〇円であり、出向会社社員と著しい差が生じているので改善すること。

3 特殊作業手当て、技能手当てを出向会社基準で支給すること。

4 通勤手当ては通勤事情、かかる費用、労働時間(勤務形態)などを考慮し、より実態に添った支給額とすること。

5 三交替特殊勤務の連続であることから出向者は身体的に相当疲労が蓄積していることから、早急に個人面談、健康調査、改善調査など実施し、必要な勤務緩和などを行なうこと。

6 年間休日はJRとかなり格差がある。社会的にも時間短縮、週休二日制の趨勢の中で年間休日七一日は少ない実態である。夜間勤務明けが日曜公休日となっている勤務については撤廃すること。

7 三交替勤務の実態を鑑み、畳の休憩所設置すること。

8 YPショップの価格を下げること。

9 作業場の焦土を点検し、必要な照度を確保すること。

10 現場に社外と通話できる電話を設置すること。

〔厚木ユニシア〕

1 駐車場で日産系統自動車以外は臨時駐車場の使用となっているが、現在は全員が臨時駐車場を使用させられている。日産自動車は正規の駐車場の使用を認め、臨時駐車場も会社近くに確保すること。

2 他職場への配転が多い人で八回以上、少ない人でも三回以上となっているが、不慣れ、不安感により負担が増大している。原則的に最初の配属職場を継続させ、応援等は本人の意思を尊重し、必要な教育・訓練をほどこすこと。

3 出向者の健康がおびやかされ病気休業、病気治療などJR職場ではみられなかった症状が発生している。出向者の健康状態について調査し、改善・対策の考え方を説明すること。

4 定期健康診断の結果について出向会社社員と同じように本人に通知することと同時に、健康上問題がある場合は現場への適切な指導を行なうこと。

5 各現場での出向者の立場が「JR実習生」「期間工」などさまざま呼ばれているので、出向者の身分を明らかにすること。

6 人材開発及び職場管理者は出向会社の訪問を実施し、出向者との面談などを実施すること。

〔東北交通機械〕

1 気吹き作業汚損手当てを支払うこと。

2 電車縁切り、屋根上碕磨き、一〇三系剥離養成作業は高所作業に該当するので、特殊勤務手当を支払うこと。

3 クレーン、玉掛け作業にたずさわった職場では、相変わらず資格のある人が不在の場合でも作業せざる得ない状況が続いている。補助的作業であっても資格及び教育訓練を実施すること。(労働安全衛生法規則第三六条一九号)

4 出向者の休憩所を設置すること。

5 更衣室のスノコの幅が狭いので増設すること。

6 更衣室の雨漏りが依然として発生するので改善すること。

7 更衣室のストーブを強力もしくは個数を増やすこと。

8 退社時一七時二〇分頃になると照明が切られるので、残業などの場合は退社する時刻まで、それ以外の場合でも日照時間によって照明を確保すること。

9 剥離、サンダー作業の長靴、ごむ手袋、皮手等の共用は衛生上問題があり、水虫感染の原因となっているので、個人貸与とすること。

以上

別紙 (5)

出向規程(昭和六二年四月人達第二号)

規程等管理規程(昭和六二年四月社達第 号)第四条第二項の規定に基づき、出向規程を次のように定める。

出向規程

目次

第一章 総則(第一条―第一〇条)

第二章 賃金(第一一条―第一五条)

第三章 福利厚生等(第一六条―一八条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この規程は、東日本旅客鉄道株式会社就業規則(以下「就業規則」という。)本則第二八条に基づき、社員に出向を命ずるときの取扱いを定めたものである。

(出向の意義)

第二条 「出向」とは、社員としての地位を保有したまま、会社の命により、関連会社又は団体等(以下「出向先」という。)に勤務することをいう。

(出向発令)

第三条 出向を命ずるにあたっては、出向先の業務内容及び就労条件を明示する。

2 事前通知は、原則として発令の一四日前までに行う。

(出向中の取扱い)

第四条 出向中の社員(以下「出向社員」という。)は人事担当部署の所属とする。

2 出向社員は、会社から指示された事項について、報告を行わなければならない。

第五条 出向期間中は、原則として休職とする。

2 出向期間は勤続年数に通算する。

第六条 出向社員が退職又は解雇となる場合は、出向を終了させることとする。

(服務)

第七条 出向社員は、会社の名誉・慣用の保持に努めるとともに、出向先の規定を遵守し、誠実に、全力をあげて業務遂行しなければならない。

(就労条件)

第八条 出向社員の労働時間、休憩時間、休日、休暇等は出向先の規定による。

2 年次有給休暇の付与日数、有効期間等については、原則として会社の規定による。この場合、出勤率は、出向先の規定する、会社の公休日、特別休日及び就業規則本則第七二条各号に相当する日をもって、算出するものとする。

(表彰及び懲戒)

第九条 出向社員の表彰は、会社の規定によるほか、出向先の規定により行う。

第一〇条 出向社員の懲戒は、会社と出向先で協議の上、いずれか一方において、それぞれの定めるところにより行う。ただし、懲戒事由が解雇に該当する場合は、会社の規定により行う。

第二章 賃金

(賃金の支給)

第一一条 出向社員に対する賃金の支給は、出向先基準又は会社基準に区分して行う。

(出向先基準)

第一二条 出向社員に対し、出向先の基準で賃金を支給する場合は、出向先の就業規則等の定めるところにより、出向先が直接支給する。

2 会社における基本給、都市手当及び扶養手当に相当する出向先の支給額の合計が、会社における基本給、都市手当及び扶養手当の合計に満たない場合、(五、〇〇〇円未満の場合は除く。)は、出向手当を会社が月額で支給する。

3 前項の出向手当は、赴任した日の属する月から帰任した日の属する月までの間(三年間に限る。)に対し、次により支給する。

(1) 前項にいう支給額と会社における額との差額が五、〇〇〇円以上一〇、〇〇〇円未満の場合は五、〇〇〇円とする。さらに、差額が五、〇〇〇円となるごとに五、〇〇〇円を加算する。

(2) 出向期間がその月の二分の一以下である場合は、前号に規定する額の二分の一とする。

(会社基準)

第一三条 出向社員に対し、会社の基準で賃金を支給する場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。

(1) 基本給は、賃金規定(昭和六二年四月人達第 号)により支給する。

(2) 昇給は、賃金規程により実施する。

(3) 都市手当は、賃金規程により支給する。ただし、出向先への赴任、出向先からの帰任及び出向先における勤務箇所の変更は、転勤とみなして取り扱う。

(4) 扶養手当は、賃金規程により支給する。

(5) 住宅手当は、賃金規程により支給する。ただし、出向先の宿舎(寮を含む。)は、会社の社宅(寮を含む。)と同様に取り扱う。

(6) 通勤手当は、賃金規程により支給する。

(7) 職務手当は、出向先において、賃金規程の職務手当の支給対象と同様と認められる業務等に従事する場合に、賃金規程を準用して支給する。

(8) 技能手当は、出向先において、賃金規程の技能資格を有し技能手当の支給対象と同様と認められる業務等に従事する場合に、賃金規程を準用して支給する。

(9) 特殊勤務手当は、出向先において、賃金規程の特殊勤務手当の支給対象と同様と認められる作業等に従事する場合に、賃金規程を準用して支給する。

(10) 割増賃金は、賃金規程により支給する。ただし、割増賃金の単価等の計算は、出向先の就業規則等の定める労働時間により行うものとし、次により取り扱う。

ア 出向先の就業規則等における会社の公休日、特別休日、調整休日及び非番に相当する日は、公休日、特別休日、調整休日及び非番と同様に取り扱う。

イ 一時間当り賃金額は、次の算式により計算するものとする。この場合、計算額に一銭未満の端数が生じたときは、その端数は一銭に切り上げるものとする。

〈編注・式〉

ウ 一週平均労働時間数は、出向先の就業規則等に定める年間所定労働時間数を五二で除した時間数とする。この場合、年間所定労働時間数は、出向先の就業規則等に定める年間の所定労働日における所定労働時間数の総和とする。ただし、その月を二種類以上の異なった勤務種別によって勤務する場合の一週平均労働時間数は、次の算式によって計算した時間数とする。この場合「実働日数」は、実際に勤務した日数とし、出向先の就業規則等に定める会社における調整休日及び非番に相当する日を含むものとする。

〈編注・式〉

エ 一日平均労働時間数は、次の算式により得られる時間数とする。

〈編注・式〉

オ 前ウ及びエにより得られる一週平均労働時間数又は一日平均労働時間数に一分未満の端数がある場合は、その端数は切り捨てるものとする。

(11) 日直・宿直手当は、出向社員が出向先の就業規則等に定めるところにより、日直又は宿直に従事した場合に、賃金規程により支給する。

(12) 賃金減額は、出向社員が正規の労働時間を欠いた場合に、出向先の就業規則等の定めにより勤務したものとみなされる場合を除いて、その勤務しない全ての時間に対し、賃金規程により行う。ただし、賃金減額の単価等は、出向社員の割増賃金の計算を行う場合の単価等により行う。

(13) 別居手当は、賃金規程により支給する。

(14) 寒冷地手当は、賃金規程により支給する。ただし、出向先への赴任、出向先からの帰任及び出向先における勤務箇所の変更は、転勤とみなして取り扱う。

(その他の取扱い)

第14条 会社の基準で賃金を支給する出向社員については、前条の定めによるほか、賃金規程による。

なお、賃金規程等を適用する場合における箇所長及び勤務箇所は、次により取り扱う。

(1) 箇所長は、当該社員の所属する人事担当部署長とする。

(2) 勤務箇所は、出向先における勤務箇所をもって勤務箇所とみなす。

2 出向先より、会社から支給される賃金等に相当する措置を受ける場合は、当該賃金は支給しないことがある。

(旅費)

第15条 出向社員に対する旅費は、出向先への赴任及び出向先からの帰任の場合に限り会社が支給する。

2 前項の規定により旅費を支給する場合は、旅費規程(昭和六二年四月財達第 号)第四章(赴任旅費)の規定を準用する。

(注)出向社員に対する出向期間中の旅費は、出向先の定めるところにより出向先から支給されることとなる。

第三章 福利厚生等

(安全及び衛生)

第一六条 出向社員の安全衛生管理については、出向先の規定による。

2 健康診断については、出向先で行う。

(業務災害補償等)

第一七条 出向社員が、出向先で業務上又は通勤途上において、負傷、疾病、傷害又は死亡したときの災害補償等は、出向先の規定による。ただし、出向先の定める補償等が、会社の規定する補償等に満たない場合には、その差額を支給する。

(福利厚生施設)

第一八条 出向社員は、会社の福利厚生施設を利用することができる。

附則

1 この達は、昭和六二年四月一日から施行する。

2 日本国有鉄道改革法(昭和六一年法律第八七号)第二三条第三項の規定に基づき採用された者のうち、日本国有鉄道が制定した「職員の派遣に関する取扱いについて(昭和五九年一〇月一〇日職職第三八五号通達)」により派遣が命ぜられた者で、派遣期間が昭和六二年四月一日以降に満了となることとなっていた者については、その期間が満了となるまでの間、「出向社員」とし、この達を適用する。

3 前項の出向社員に対する賃金は、第一三条に規定する会社基準により支給する。

別紙 (6)

労働協約

東日本旅客鉄道株式会社(以下、「会社」という。)と国鉄労働組合東日本鉄道本部(以下、「組合」という。)とは、この労働協約(以下、「協約」という。)を締結する。

第一章 総則

(協約の目的)

第一条 この協約は、会社・組合双方が信義誠実の原則にしたがい健全な労使関係を確立し、もって社業の発展をはかることを目的とする。

(協約の遵守義務)

第二条 会社および組合は、この協約を遵守し、相互に権利を尊重し、誠実に義務を履行する。

(非組合員の範囲)

第三条 次の各号に該当する者については、組合員となることはできない。

(1) 管理職社員(参与、参事、参事補、副参事、及び主事の者)及び役付医療社員。

(2) 前号の他、次に掲げる者のうち、会社が指定する者。

人事、労務、文書、経理、法務、経営、監査、審査、運転考査、秘書及び守衛担当の係員。

(協約の優先)

第四条 就業規則その他これに準ずる諸規定が、この協約に抵触する場合は、その抵触する部分についてはこの協約が優先する。

第二章 組合活動

第一節 就業時間中の組合活動

(組合活動)

第五条 会社は、組合員の正当な組合活動の自由を認め、これにより不利益な扱いをしない。

(勤務時間中の組合活動)

第六条 組合員(専従者を除く。以下同じ)は、勤務時間中に組合活動を行うことは出来ない。但し、次の各号のいずれかに該当し、会社から承認を得た場合には勤務時間内に行うことができる。

(1) 経営協議会に協議委員及び第二三条に定める関係者として出席する場合、また、第二四条に定める幹事が事前に所要事項の打ち合わせを行う場合。

(2) 団体交渉に交渉委員及び第三八条に定める関係者として出席する場合。

(3) 苦情処理会議に委員、補欠委員、当事者及び第七〇条第二項に定める参考人として出席する場合、また、第六七条に定める幹事が申告のあった苦情について事前審理をおこなう場合。

(4) 簡易苦情処理会議に委員、補欠委員、当事者及び第八五条に定める参考人として出席する場合。

(5) 全社大会及び地方大会、中央委員会及び地方本部委員会に正規の構成員として出席する場合。

(6) その他組合の申出により会社が特に承認した場合。

(賃金の控除)

第七条 会社は、組合活動のため勤務につかない者には、その日または時間について賃金を支給しない。但し、前条第一号から第四号に該当する場合については賃金は控除しない。

(手続)

第八条 組合及び組合員は、第六条第五号、六号の定めるところにより、会社の承認を得ようとする場合には、別に会社が定める様式の書面に必要事項を記入のうえ、少なくとも一〇日前までに会社に届け出なければならない。

第二節 専従者

(専従者の選任)

第九条 会社は、特定の社員たる組合員が組合の業務に専ら従事することを認める。

2 前項に定める組合業務専従者(以下、「専従者」という。)の数は、毎年一〇月一日現在の当該労働組合の社員である組合員数を基礎に会社が決定し組合に通知する。

3 組合は、前項により決定された専従者数について、本部及び下級機関ごとの割当数を会社に届け出るものとする。

4 組合は専従者となるべき者を選任しようとする場合は、会社が別に定める専従休職許可願を提出し、その許可を得るものとする。

5 組合は専従休職許可願を提出する場合は、専従をしようとする日の少なくとも一〇日前に、本部専従者については人事部長に、その他機関の専従者については当該所属長に提出するものとする。

6 専従者は、専従期間中も社員としての体面を重んじ、職場の秩序を尊重しなければならない。

7 会社は、業務上の必要が生じた社員、または前項の定めるところに反する社員については、第四項に定める許可を取り消すことができる。

(期間)

第一〇条 専従休職の許可を申請する場合は、期間を定めて行うこととし、その期間は原則として一年以上とする。

(専従者の取扱い)

第一一条 専従者はその期間中休職とし、次の通り取り扱う。

(1) 専従者は、専従休職の発令をされたときはその当日から勤務に従事しないものとし、専従休職の解除を発令されたときはその当日から勤務するものとする。

(2) 専従期間中は、いかなる賃金も支払わない。但し、昇給については、一般組合員と同等に実施する。

(注) 寒冷地手当及び期末手当については、基準日現在が専従期間となる場合、支払わないことになる。

(3) 月の途中において、社員が専従者となった場合はその前日まで、専従者が業務に復帰した場合はその当日から、それぞれ基本給、都市手当、扶養手当、住宅手当、職務手当、技能手当及び別居手当を日割計算により支給する。

(4) 期末手当の期間率の算定にあたっては、専従期間を欠勤期間として取り扱う。

(5) 専従期間は勤続年数に算入する。

(6) 共済掛金、雇用保険料、児童手当の事業主負担分については組合が負担するものとし、会社の定めに従って、会社に納めることとする。但し、その支払手続きは会社で行う。

(7) 組合が専従者に支払う賃金について、組合から会社に対してその支払賃金の予納があった場合は、会社は社員に準じて、共済掛金、雇用保険料等を控除して支払う。

(8) 社宅、福利厚生施設の利用については、一般組合員と同様に扱う。

(9) 専従期間中の被服類の貸与は行わない。但し、すでに貸与されている被服類については返納を保留する。

(10) 年次有給休暇(以下、「年休」という。)の取扱いについては、次の通りとする。

ア 専従期間中は、年休の発給は行わないこととし、年休の請求があっても、これを認めない。

イ 復帰した場合、専従前に請求権を取得した年休については、その有効期間内に限り請求することができる。

ウ 復帰した年度の年休については、次の年休発給日までの日数に応じ、当該専従者の勤続年数に応じた付与日数を基礎として、日割計算により付与(同一年度内に、すでに発給している場合を除く。)する。但し、端数がある場合は、切り捨てることとする。

エ 年休の発給日数計算上は、専従期間は出勤したものとみなす。(解除)

第一二条 組合は、専従者が専ら組合の業務に従事しなくなった場合は、専従休職解除願を会社に提出しなければならない。

2 会社は、前項の提出を受けた場合は休職を解除する。

3 組合は専従休職解除願を提出しようとする場合は、専従を解除しようとする日の少なくとも一〇日前に、本部専従者については人事部長に、その他機関の専従者については当該所属長に提出するものとする。

(復職)

第一三条 専従者が復職する場合は、原則として原所属に復帰させる。

第三節 組合による企業施設の利用

(組合事務所)

第一四条 組合は、組合事務所として会社の建物を使用する場合は、会社に申し出、その許可を得なければならない。

2 前項の申出は、会社が別に定める様式の書面で行うこととし、期間は三年を限度とする。但し、更新を妨げない。

3 会社は、必要と認めた場合、貸付施設内に立入り、施設の使用状況について調査することができる。組合は、正当な理由なくその立入り調査を拒むことができない。

4 組合が、会社が許可に際して付した遵守事項に違反した場合には、会社はその使用の許可を取り消すことができる。

5 第一項に定める建物の使用にあたっては、原則としてその建物に課せられる公租公課相当額を負担するものとする。

(一時的利用)

第一五条 組合は、会社の施設、什器等を一時的に利用する場合は、会社に申し出、その許可を得なければならない。

2 前項の申出は、使用の目的、責任者名、時間、人数等を明示して書面で行うものとする。

3 会社は、組合が前項の規定に違反した場合、もしくは申し出と異なる使用方をした場合には、使用の許可を取り消すことができる。

(掲示)

第一六条 組合は、会社の許可を得た場合には、指定された掲示場所において、組合活動に必要な宣伝、報道、告知を行うことができる。

2 会社は、業務上の必要が生じた場合には、前項で指定した掲示場所の変更または取消しをすることができる。

3 組合は、会社の指定した組合掲示場所以外の場所に、掲示類を掲出してはならない。

(掲示内容)

第一七条 掲示類は、組合活動の運営に必要なものとする。また、掲示類は、会社の信用を傷つけ、政治活動を目的とし、個人を誹謗し、事実に反し、または職場規律を乱すものであってはならない。

2 掲示類には、掲出責任者を明示しなければならない。

(違反の措置)

第一八条 会社は、組合が前二条の規定に違反した場合は、掲示類を撤去し、掲示場所の使用の許可を取り消すことができる。

第三章 経営協議会

(目的)

第一九条 会社は企業の繁栄を目的として、組合と相互の意志疎通を図り企業運営の円滑を期して、組合との間に経営協議会を設ける。

(設置単位)

第二〇条 経営協議会は、本社及び地方において行う。

2 地方における経営協議会は、東京圏エリア、東北地域本社、新潟支社、長野支社、盛岡支店、秋田支店において行う。

3 東京圏エリアとは、別に定めたところをいう。

(協議委員)

第二一条 協議委員の数は、会社側、組合側各一二名以内とし、双方同数とする。

(協議委員名簿の交換)

第二二条 会社及び組合は、協議委員が決定したときは、その名簿を相手方に提示しなければならない。これを変更した場合も同様とする。

(関係者の出席)

第二三条 あらかじめ双方が合意をしたときは、関係者を出席させて報告を求め、意見を徴することができる。

(幹事)

第二四条 経営協議会は、協議委員のうちから、会社側及び組合側それぞれ一名の幹事を選出する。

2 幹事は事前に議案、日時、場所等の所要事項を決定する。

(開催回数)

第二五条 経営協議会は、原則として、四半期毎定期的に開催するものとする。ただし、必要に応じ、臨時に開催することを妨げない。

(議事進行)

第二六条 経営協議会は議長制をとり、議長は会社側が指名する。

(付議事項等)

第二七条 経営協議会の付議事項は、次の各号に掲げるものとする。

(1) 業務の合理化ならびに能率の向上に関する事項

(2) 福利厚生に関する事項

(3) 事故防止に関する事項

(4) その他会社側と組合側とが必要と認めた事項

2 会社は、第一項の他、必要に応じて次の各号について組合側に説明を行う。

(1) 事業計画に関する事項

(2) 営業報告及び決算に関する事項

(3) その他会社が必要と認めた事項

(非公開)

第二八条 経営協議会は原則として非公開とする。但し、必要があると双方が合意した場合には、議事内容を社内に公開する。

(守秘義務)

第二九条 協議委員は、協議によって知り得た秘密を外部に漏してはならない。

(事務局)

第三〇条 経営協議会にその事務を処理するため、事務局を置く。

2 本社においては人事部勤労課、地方にあっては総務部勤労課(勤労課が設置されていない地方は総務担当課)に置く。

第四章 団体交渉

(団体交渉の原則)

第三一条 団体交渉は、信義誠実の原則に従い秩序を保ち平和裡に行う。

(団体交渉の設置単位)

第三二条 団体交渉は、本社及び地方において行う。

2 地方における団体交渉は、東京圏運行本部、東北地域本社、新潟支社、長野支社、盛岡支店、秋田支店、高崎運行部、水戸運行部、千葉運行部において行う。

(交渉委員)

第三三条 団体交渉は専ら交渉委員がこれを行う。

(交渉委員の数)

第三四条 交渉委員の最大数は、昭和六二年四月一日現在の社員たる組合員数が一、〇〇〇人以下の場合は三人、一、〇〇〇人を超え三、〇〇〇人以下の場合は五人、三、〇〇〇人を超え五、〇〇〇人以下の場合は七人、五、〇〇〇人を超え一〇、〇〇〇人以下の場合は一〇人、一〇、〇〇〇人を超え一五、〇〇〇人以下の場合は一三人、一五、〇〇〇人を超える場合は一五人とする。

(交渉委員の任期)

第三五条 交渉委員の任期は、原則として一年とする。ただし、中途で交渉委員を変更した場合の任期は前交渉委員の任期の残存期間とする。

(交渉委員の指名)

第三六条 会社を代表する交渉委員は会社が、組合を代表する交渉委員は組合が、それぞれ対応の機関ごとに指名する。

(交渉委員名簿の交換)

第三七条 会社及び組合は、交渉委員を指名したときは、その名簿を相手方に提示しなければならない。これを変更した場合も同様とする。

(関係者の出席)

第三八条 あらかじめ双方が合意をしたときは、関係者を出席させて報告を求め、意見を徴することができる。

(団体交渉事項)

第三九条 団体交渉は次の各号に定める事項について行う。

(1) 賃金、賞与及び退職手当の基準に関する事項

(2) 労働時間、休憩時間、休日及び休暇の基準に関する事項

(3) 転勤、転職、出向、昇職、降職、退職、解雇、休職及び懲戒の基準に関する事項

(4) 労働に関する安全、衛生及び災害補償の基準に関する事項

(5) その他労働条件の改訂に関する事項

(6) この協約の改訂に関する事項

(交渉事項の事前通知)

第四〇条 団体交渉を行なおうとするときは、あらかじめ交渉事項を相手方に示すとともに、次の事項について取り決めを行うものとする。

(1) 交渉の日時、所要時間及び場所

(2) 交渉委員の員数及び氏名

(3) 前各号のほか、進行手続等必要な事項

(公開の原則)

第四一条 団体交渉は、原則として公開とする。ただし、双方があらかじめ合意したときは、非公開とすることができる。

(守秘義務)

第四二条 交渉委員は、交渉によって知り得た秘密を外部に漏らしてはならない。

(協約等の調印)

第四三条 団体交渉において妥結した事項についは、双方の機関を代表する者で記名、押印を行う。

第五章 紛争処理

第一節 平和条項

(平和義務)

第四四条 会社及び組合は、労使間の平和を維持するため、この協約の有効期間中、この協約の改廃を目的とした争議行為を行わない。

(紛争の解決)

第四五条 会社と組合との間に紛争が生じたときは、双方誠意をもって解決に努力する。

(あっせん、調停及び仲裁)

第四六条 会社及び組合は、自主的解決の努力を尽してもなお解決をみないときは、労働委員会にあっせんまたは調停を申請することができる。なお、その際、申請者は前もって相手方に、書面によりその旨通知するものとする。

2 前項によるも、解決できなかった場合には、会社と組合は合意のうえ、労働委員会の仲裁に付することができる。

(平和条項)

第四七条 会社と組合は、協議または交渉を経なければ争議行為を行わない。また、前条に定める手続きが進行中である時には、それが完了するまでは、争議行為を行わない。

第二節 争議条項

(争議の予告)

第四八条 組合が争議行為を行う場合には、日時及び場所並びに争議行為の概要を一〇日前までに、また、争議行為の目的、形態、規模、日時、期間及び場所等の具体的かつ詳細な内容をその七二時間前までに文書をもって会社に通知しなければならない。

2 組合が争議行為の予告内容を変更する場合には、その都度、変更した争議行為の開始日時の四八時間前までに会社に通知しなければならない。

3 組合が争議行為を延期する場合及び全部又は一部を中止する場合には、その旨を直ちに会社に通知しなければならない。

(争議行為に伴う遵守事項)

第四九条 組合が、争議行為を行う場合は、次の事項を遵守しなければならない。

(1) 争議行為を行う組合員は、争議行為開始時までに、会社の書類並びに事業所等施設その他会社の財産を、以後危険及び支障のないように通常の状態に保ち、会社に引継ぎまたは引渡しを行う。

(2) 争議行為開始時に運行中の列車がある場合、乗客の安全及び車両の保全が図られる地点までは、列車の運行を確保するものとする。なお、二つ以上の旅客会社にまたがって運行される列車については、紛争当事会社以外の会社において列車の運行に支障を出さないような措置がとられるまで、争議行為の対象としない。

(争議行為中の会社施設、構内の立ち入り及び物品の使用)

第五〇条 争議行為中、当該争議行為に関する組合員は、会社の施設、構内、車両への立ち入り及び物品の使用をすることはできない。ただし、次の各号に掲げるものについてはこの限りでない。

(1) 組合に使用を許可した組合事務所、その附帯設備・備品及び組合掲示板

(2) 社宅、寮等の福利厚生施設

(3) その他特に会社が使用を認めた施設、構内及び物品

2 組合は、前項ただし書の会社施設、構内及び物品をそのもの本来の目的以外の目的で使用をすることはできない。

(報道告知)

第五一条 会社と組合との間に紛争が生じているとき及び争議期間中、組合は会社施設、構内及び車両を利用して宣伝、報道、告知を行わない。

2 旅客への告知については会社が別に定める。

(前二条違反の措置)

第五二条 会社は、組合または組合員もしくはその委託を受けた者が前二条に違反した場合、これを排除、撤去し、または禁止することができる。

(非常事態への対応)

第五三条 争議期間中でも天災、重大事故その他非常事態が発生したとき、またはそのおそれのあるときは、会社は必要な組合員をその事態収拾に必要な業務に直ちに従事させることができる。

(争議中の勤務者)

第五四条 組合は、争議期間中特定の組合員が、次の各号に該当する業務に就くことを認める。ただし、その業務範囲及び人員については、会社と組合は別に協議する。

(1) 事業所等施設その他会社の財産の安全維持及び警備に必要な業務に従事する者

(2) 争議解決のために必要な業務に従事する者

(3) その他会社及び組合が必要と認めた者

(争議中の賃金控除)

第五五条 会社は、争議行為に参加し又は争議行為に起因して業務に就かなかった組合員には、その業務に就かなかった日または時間について賃金を支給しない。

(争議行為の解除通知)

第五六条 争議行為を解除した時は、直ちに相手方にその旨通知し、誠意をもって、すみやかに平常の状態に復するように努力しなければならない。

第六章 苦情処理

(苦情処理の範囲)

第五七条 組合員が、労働協約及び就業規則等の適用及び解釈について苦情を有する場合は、その解決を苦情処理会議に請求することができる。

ただし、苦情の申告については、苦情となる事実の発生した日から一〇日以内に行わなければならない。

2 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」一三条に定める苦情の処理については本章に定めるところにより取り扱う。

(苦情処理会議設置単位)

第五八条 会社と組合は、次の苦情処理機関を設ける。

(1) 中央苦情処理会議(以下、「中央会議」という。)

(2) 地方苦情処理会議(以下、「地方会議」という。)

2 中央会議は本社に、地方会議は東京圏営業本部、東京圏運行本部、新幹線運行本部、東北地域本社、新潟支社、長野支社、盛岡支店、秋田支店、東京工事事務所、東京電気工事事務所、仙台工事事務所、信濃川工事事務所、東北自動車部、高崎運行部、水戸運行部、千葉運行部に設ける。

(事務局)

第五九条 苦情処理会議を設置する箇所に事務局を置く。

2 中央会議の事務局は人事部勤労課に置く。

3 地方会議の事務局は総務部勤労課(勤労課が設置されていない地方は総務担当課)に置く。

(会議の合同)

第六〇条 地方会議が協議の結果必要と認めた場合は、関係地方会議は合同して開催することができる。

2 前項の会議の解決は、その関係地方会議の解決とみなす。

(会議の権限)

第六一条 中央会議は、地方会議が第七四条に定める期間内に解決し得なかった事案又は解決することが適当でない事案に対する事務を、地方会議は、その管轄内の社員の苦情に関する事務及び第八五条第一項但書の規定により苦情処理会議への移管が決定された場合の事務をつかさどる。

2 中央会議は、地方会議に対し、その事務処理に必要な報告を求め、又は指示することができる。

3 中央会議において各側委員の意見が一致したときは、その事案を地方会議に処理期間を定めて差し戻すことができる。

4 中央会議の解決及び前項に定める地方会議の解決は、この協約に基づく苦情処理の最終段階とする。

(苦情処理委員会の数)

第六二条 中央会議は、会社を代表する委員五人と組合を代表する委員五人、地方会議はそれぞれを代表する委員各三人をもって構成する。

(苦情処理委員の任期)

第六三条 苦情処理委員の任期は、原則として一年とする。ただし、中途で苦情処理委員を変更した場合の任期は前苦情処理委員の任期の残存期間とする。

(苦情処理委員の指名)

第六四条 会社を代表する苦情処理委員は会社が、組合を代表する苦情処理委員は組合が、それぞれ対応の機関ごとに指名する。

2 苦情処理委員の指名にあたっては、それぞれ同数の補欠委員を指名することができる。

(補欠委員)

第六五条 補欠委員は、次の各号の掲げる場合において、正委員の代わり会議に出席し、苦情の処理を行うことができる。

(1) 病気及び出張その他の理由で、正委員の不在が明確な場合

(2) 正委員の所属に変更があって、処理上支障がある場合

(3) 正委員が、職名をもって指名され、又は選出されている場合で、その職に変更があって処理上支障がある場合

(4) 苦情の内容が、正委員及びその近親者に関するものである場合

2 前項各号に掲げる場合のほか、特に会議において各側委員の意見が一致した場合には、双方の補欠委員をもって苦情処理を行うことができる。

3 事務引き継ぎその他の理由で、会議が必要と認めた場合には、補欠委員を参加させることができる。

(苦情処理委員名簿の交換)

第六六条 会社及び組合は、苦情処理委員を指名したときは、その名簿を相手方に提示しなければならない。これを変更した場合も同様とする。

(幹事の指名)

第六七条 地方会議において、会社及び組合は、それぞれ指名した苦情処理委員の中から各一名づつ幹事を指名する。

(申告)

第六八条 組合員が苦情の解決を求めようとする場合は、地方会議の事務局に申告しなければならない。ただし、個人の集団的な苦情の場合は、本人に代わって組合が申告することができる。

2 死亡した者の苦情の申告は、当該会議が認めた代理人が申告することができる。

3 申告する場合は、会社が別に定める苦情申告票を提出しなければならない。

(事前審理)

第六九条 幹事は、申告のあった苦情について、すみやかに事前審理を行う。

(受理)

第七〇条 事前審理において申告を受けた苦情の内容が、苦情として取り扱うことが適当であると認められる場合もしくは、第八五条第一項但書の規定により、苦情処理会議への移管が決定された場合は、地方会議で申告を受理して審議する。

2 審議にあたって、各側委員の意見の一致をみた場合には、当事者のほか参考人の出頭を求め報告を徴し、又は書類の提出を求めることができる。

(却下)

第七一条 事前審理において申告を受けた苦情の内容が、苦情として取り扱うことが適当であると認められる場合を除き、これを却下する。

(上移)

第七二条 地方会議において、第七四条に定める期間内に解決することができなかった場合、又は申告が関係の長の権限その他の理由で地方会議で苦情を解決することが適当でないと認めた場合は、中央会議に上移するものとする。

(上移の際に添付すべき書類)

第七三条 前条に定める上移には、苦情申告票、証拠書類、苦情整理書、陳述聴取書の写その他解決の参考となる書類を添付しなければならない。

(処理期間)

第七四条 会議は、申告又は上移を受理した日からそれぞれ次に掲げる期間内に処理し、又は解決を上移しなければならない。ただし、第六一条第三項に定める場合は、各側委員において定めた期間とする。

地方会議  二週間

中央会議  二週間

2 会議は、苦情処理の経過を別に定める苦情整理書に整理しなければならない。

(異議の申立)

第七五条 当事者が、地方会議の解決に異議のある場合は、その解決の通知があった日から五日以内に、中央会議に対し、別に定める異議申立書により、異議の申立をすることができる。

2 前項の異議の申立は中央会議で受理する。その期間は第七四条の定めを準用する。

(会議の非公開)

第七六条 会議は原則として非公開とする。ただし、各側委員の意見が一致した場合は、これを公開することができる。

(秘密の厳守)

第七七条 会議の委員及び関係者は、苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

(通知)

第七八条 会議は処理の結果について、文書をもって申告者及び会社に通知しなければならない。

(効力)

第七九条 会社並びに苦情申告者、異議申立者及びそれぞれの所属する組合は、苦情処理手続きによって最終的に決定された事項を、責任をもって実施しなければならない。

2 苦情処理の効力は、解決の日から発生する。

第七章 簡易苦情処理

(簡易苦情処理の範囲)

第八〇条 組合員が、本人の転勤、転職、降職、出向及び待命休職についての事前通知内容について苦情を有する場合は、その解決を簡易苦情処理会議(以下、「会議」という。)に請求することができる。

2 前項の苦情は、本人が箇所長から事前通知書を受けた日の翌日までに申告しなければならない。

(簡易苦情処理会議設置単位)

第八一条 会議は、地方苦情処理会議が設置される箇所に常設する。

(事務局)

第八二条 会議を設置する箇所に事務局を置く。

2 事務局は総務部勤労課(勤労課が設置されていない地方は総務担当課)に置く。

(簡易苦情処理委員)

第八三条 会議は、会社を代表する委員二人と組合を代表する委員二人をもって構成する。

2 簡易苦情処理委員の任期、指名、名簿の交換及び補欠委員については、第六三条から第六六条の定めを準用する。

(申告)

第八四条 組合員が苦情の解決を求めようとする場合は、会議の事務局に申告しなければならない。

2 前項の申告は、会社が別に定める簡易苦情申告票(以下、「申告票」という。)により行う。

ただし、第八〇条第二項に定める日までに申告票を提出できない場合は、口頭をもって申告することができる。

3 口頭をもって申告した場合は、以後すみやかに申告票を提出しなければならない。

(審議)

第八五条 苦情の申告を受け付けたときは、直ちに会議を開催し、発令の日までにその苦情を処理しなければならない。ただし、発令の日までに判定ができなかった場合は、第六章に定める苦情処理手続きに移すかどうか、その取扱いを決定しなければならない。

2 審議にあたっては、各側委員の一致をみた場合には、当事者のほか参考人の出頭を求め、報告を徴し、又は書類の提出を求めることができる。

(却下)

第八六条 申告を受けた苦情の内容が、第八〇条第一項の定めによる苦情として取り扱うことが、適当であると認められる場合を除き、これを却下するものとする。

(簡易苦情処理会議の非公開)

第八七条 会議は原則として非公開とする。ただし、各側委員の意見が一致した場合は、これを公開することができる。

(秘密の厳守)

第八八条 会議の委員及び関係者は、簡易苦情処理に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

(通知)

第八九条 会議は処理の結果について、文書をもって申告者及び会社に通知しなければならない。

(効力)

第九〇条 苦情申告者及び会社は、会議の判定及び決定については、最終のものとし、これに従わなくてはならない。

第八章 付則

(有効期間及び改廃手続き)

第九一条 この協約の有効期間は、締結の日から昭和六二年九月三〇日までとする。ただし、期間満了一カ月前までに、当事者のいずれからも文書による改定の意思通告がないときは、さらに一カ年有効とする。

(協約の保管)

第九二条 この協約は二通作成し、会社、組合おのおの一通を保有する。

昭和六二年四月二三日

東日本旅客鉄道株式会社

代表取締役社長 住田正二

国鉄労働組合東日本鉄道本部

執行委員長 金井末吉

別紙 (7)

労働協約の適用に関する覚書

東日本旅客鉄道株式会社秋田支店と国鉄労働組合秋田地方本部とは、東日本旅客鉄道株式会社と国鉄労働組合東日本鉄道本部との間に締結された労働協約(昭和六二年四月二三日、以下「協約」という。)に基づき、秋田支店固有の事柄について協議等を行うこととし、その適用にあたって、次のとおり覚書を交換する。

1 経営協議会

(1) 経営協議委員(協約第二一条)

協議委員の数は、会社側、組合側各五名とする。

(2) 幹事(協約第二四条)

幹事は、会社側は総務課長、組合側は書記長とする。

(3) 議長(協約第二六条)

議長は、総務課長とする。

(4) 事務局(協約第三〇条)

事務局は、総務課に置く。

2 団体交渉

(1) 交渉委員の数(協約第三四条)

交渉委員の数は、会社側、組合側各五名とする。

(2) 交渉事項の事前通知(協約第四〇条)

団体交渉を行おうとするときは、原則として一〇日以前に、書面をもって相手方に示さなければならない。

3 苦情処理会議

(1) 事務局(協約第五九条)

地方苦情処理会議の事務局は、総務課に置く。

4 簡易苦情処理会議

(1) 事務局(協約第八二条)

簡易苦情処理会議の事務局は、総務課に置く。

昭和六二年五月六日

東日本旅客鉄道株式会社

秋田支店長 田沼睦雄

国鉄労働組合秋田地方本部

執行委員長 三浦敬

別紙 (8)

国労東日本第一三号

一九八七年五月一二日

東日本旅客鉄道株式会社

代表取締役社長住田正二殿

国鉄労働組合東日本鉄道本部

執行委員長金井末吉

団体交渉の申入れ

下記事項について、団体交渉により解決をはかるよう申し入れる。従って、日程等の打合わせを早急に行うこととしたい。

1 「出向」の基準について

「出向」問題は、社員の生活設計に重大な影響を及ぼすものであり、早急な解決が求められています。

従って、次のとおり申入れ、労働不安の除去に全力をあげ、団体交渉において正しく解決するよう申入れます。

(1) 「出向」の基準については、本人の申し出を前提に団体交渉により、決定すること。

(2) 団体交渉により「出向の基準」が決定されるまでは、取扱いは行わないこと。

2 組合事務所及び組合掲示板等にかかわる細部事項について、早急に団体交渉を行うこと。

以上

別紙 (9)

国労東日本第一五号

一九八七年五月二五日

東日本旅客鉄道株式会社

代表取締役社長住田正二殿

国鉄労働組合東日本鉄道本部

執行委員長金井末吉

出向の基準について

労働協約第三九条第三号の出向に関する基準について、以下のとおり確立するよう要求する。

尚、夏臨の労働条件についても、別に申し入れを行うので団体交渉を行うこととされたい。

1 募集により行う。

2 強制・強要はしない。

3 第一項によっても、必要要員に満たない場合は、次による。

(1) 再募集を行う。

この場合は社員に対し個々に説明し、了解を得たうえで実施する。

(2) 社員の生活状況等も充分勘案し、実施する。

(3) 通勤時間、通勤距離等についても、常識をこえない範囲で、実施する。

4 出向後、健康をはじめ、生活状況等の理由により、復職の申し出があった場合は、努めて応じることとする。

5 出向の期間については、六ケ月を標準とし、長くても一年間とする。

以上。

別紙 (10)

社員の出向に関する協約(国労案)

東日本旅客鉄道株式会社と(以下、単に「会社」という)国鉄労働組合東日本鉄道本部(以下、単に「国労」という)とは、社員の出向、あるいは社員に出向の必要が生じた場合の取り扱いについて、次のとおり協定を締結する。

1 会社は、年間あるいは四半期毎の計画について、本社及び支社・支店で、次の事項について、事前に協議し、合意のうえ、実施する。

(1) 出向先と個々の目的

(2) 出向期間

(3) 出向に必要な対象職種と対象人数

(4) 出向期間中の労働条件

(5) 出向期間満了後の復帰条件

(6) その他必要な事項

2 出向について会社は、期間などを定めての「募集」により行い、強制・強要は行わない。

3 前項により必要要員に満たない場合は、次により行う。

(1) 再募集を行う。

この場合は、対象職種の社員に対して個々に具体的に説明し、本人の同意を得たうえで、実施する。

(2) 個々の具体的説明では、個々の社員の具体的な生活状況等を充分に勘案しておこない、実施する。

4 出向の後、生活状況などの事由により、復帰の申し出が在った場合は、速やかに元職場に復帰させることとする。

5 問題が生じた場合は、本社及び支社・支店で協議する。

一九八七年六月 日

東日本旅客鉄道株式会社社長

国鉄労働組合東日本鉄道本部執行委員長

別紙 (11)

昭和 年 月 日

出向先の就労条件等について

JR東日本

秋田支店長

殿

[出向先概要]

1 出向先

2 所在地

3 業種

4 業務内容

[就労条件]

1 始終業時刻 始業時刻 時 分 終業時刻 時 分

2 休憩時間 時〜 時

3 休日

4 年次有給休暇 付与日数、有効期間等についてはJR東日本の規定によります。

5 賃金 JR東日本の基準により支給します。支給方法については、銀行振込又は直接手渡しとなります。

[出向期間] 昭和 年 月 日から 年間とします。

[その他]

1 共済組合関係 貯金の預入れ、払戻し等の場合は、総務課要員管理プロジエクトに連絡して下さい。

2 職務乗車証等 規程に基づき取扱います。

3 年次有給休暇の申込み 申込み手続きは、出向先の定めによることになります。

4 給与明細等 JR東日本からの給与明細・連絡事項等については、その都度お知らせします。

5 連絡先 その他、詳細については下記に問い合わせて下さい。

〒010 秋田市中通七丁目一―一

JR東日本秋田支店総務課要員管理プロジェクトチーム

NTT 〇一八八―三三―六五〇五

JR 〇三六―二〇四四

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